【防犯&護身術】催涙・防犯スプレーの効果的な使い方&オススメ3種|動画あり
この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴25年)
写真:TakaDifenseDesignより
女性や力の弱い方でも使える護身用品は多くありません。
その中で最も効果的なのは防犯スプレー(催涙スプレー)です。
モノによっては、最大の猛獣ヒグマを撃退するほど強力。
良い商品を選び、正しい使いた方を覚えれば、最強の護身用品になります。
(熊用スプレーは強力すぎるので人間に使ってはいけません!)
警官や警備員が装備している特殊警棒は、使いかた次第でスプレーを上回る実用性があります。
ただし誰もが使える物ではなく、使いこなせる人間は極わずか。
修練には大変な努力と年月が必要なのです。
警棒術公開①|警護員向け特殊警棒の使用とタブー!動画あり
その点防犯・催涙スプレーは、わずかなトレーニングで絶大な効果が期待できます。
普通の護身用品は、使う人間の体力や技量によって差がでるのにくらべ、催涙スプレーは誰が噴射しても効果に変わりがありません。
ただし、防犯・催涙スプレーには、あまり知られていない効果的な使い方と、決して取ってはいけない行動があります。
※中盤以降に動画で説明しています。
1.防犯スプレーの効能
※「防犯スプレー」と検索される事の方が多いようなので、本記事では催涙スプレーではなく「防犯スプレー」と呼称します。
1-1 防犯スプレーを浴びたらどうなる?
「サイルイ」を「サイミン」と勘違いされている方がいるようです。
実際は、眠くなるどころか、すさまじい激痛で小一時間ほど身悶え続けます!
当然その間は目を開けられないので、一人では動くこともままなりません。
刺激の種類は「ヤケド」に近く、バーナーで焙られる様な激しい痛みにおそわれます。
ヤケドの経験がある方は分かると思います。
患部に冷水をかけている間は痛みがやわらぎ、空気に触れると激痛がぶりかえすあの感覚です。
あれが30分以上も継続するのです。
分からない方は「激辛料理」を食べたときをイメージしてください。
水を飲むとヒリヒリがやわらぎ、飲まないとぶり返す感じです(なんとなく分かりますか?)
ただし痛みは、その数十倍といっても大げさではありません。
私自身も実験で浴びた事がありますが、予想をはるかに上回る激痛が30分間絶え間なく続きました。
すこしづつ痛みが弱まり、完全に治まったのは約1時間後です。(浴びる量と季節(気温)により回復時間が変わります)
1-2 防犯スプレーは、なぜあれほど効くのか?
主成分はおもに、天然系(OC)と化学系(CN)の2種に分かれます。
近年はOCが主流です。
ちなみにOC(Oleoresin Capsicum)とは、トウガラシ由来の成分のこと。
毒性はなく後遺症の心配もありませんが、海外では死亡事例があります。
日本国内の事故例は聞いたことがありません。
使われる回数が圧倒的に多い海外では、死亡を含む事故が発生したと思われます。
ただし極めて低いとはいえ、死に至る可能性があるのも事実です。
しかし死亡原因の多くは、過剰な噴射(かけ過ぎ)や、持病・薬物の摂取など二次的理由が重なった上での呼吸困難とみられています。
緊急時に適切(正当防衛や緊急避難)な使い方をするかぎり、過剰防衛に問われる心配はなさそうです。
防犯スプレーには、浴びた者を「確実に行動不能にする」強力な効果があります。
しかも成分自体に毒性はなく、使う側はもちろん浴びた相手にも安全な護身用品です。
1-3 おすすめの防犯スプレー(効かない製品に注意)
具体的なメーカー名は公表できませんが、世の中には全く効かない製品も存在します。
実際に試すわけにいきませんので、購入に当たっては評判の良いモノを選びましょう。
(ネット上に参考になるレビューも上がっています)
探すのが面倒な方や、機種選びにお悩みの方は下記を参考にしてください。
護身用品は、アマゾン・楽天での扱いが数が少ないのですが、優秀かつ入手しやすい防犯スプレーを3点選びました。
1.MACE高濃度OCペッパー ジェル LEDライト付 TAKE DOWN MK-Ⅲ 3060
LEDライト付き。
意識的にスイッチをon/offしなくても、噴射ボタンに指を置くとライトが点灯します。
暗がりで使う可能性の高さを考えると、これは必要な機能です。
しかも風の影響を受けにくいジェルタイプ。
やや大きいですが、サイズに不満がなければおススメです。
催涙スプレー メース TAKE DOWN MK-Ⅲ 3060 (lam-c.com)
mace(メース) プロ仕様 高濃度OCペッパー ジェル LEDライト付き 防犯 護身用 催涙スプレー TAKE DOWN MK-Ⅲ 3060
2.エリミネーター 3/4オンス スライドロック 防犯スプレー
エリミネーターは、アメリカで公的機関に採用実績のある信頼のブランドです。
LEDライトが必要ない方や、コンパクトさを重視する方には、こちらがおすすめです。
小型ですが、水鉄砲タイプなので飛距離があります。また催涙成も強力で効果は申し分ありません。
ただし小さい分、発射回数は少なくなります。
3.ポリスマグナム 2オンス(50ℊ)
こちらも信頼のエリミネーター製です。
握りやすく、内容量も十分な2オンス。
発射ボタンは、フリップトップ式という、現在最もすぐれた催涙スプレーの方式です。
対人用の催涙スプレーとして、トップクラスの信頼度を誇ります。
噴射の仕方は水鉄砲(液状)タイプ。
催涙スプレーの噴射は「霧状」と「液状」に大別できます。
霧状には「風に弱い・周囲に飛散のおそれ」という致命的な欠点があるので、液状をお勧めします。
4.その他 催涙スプレー用の強化アタッチメント (上級者向け)
催涙スプレーは、相手との間合いが近すぎると大変不利になります。
接近距離でも効果的に使うためのアタッチメントです。
TakaDefenseDesign (t-d-design.com)
2.防犯スプレーはこう使う
比較的簡単に使える防犯スプレーですが、練習は必須です。
練習の一切必要ない護身用品はありません。
防犯ブザーでさえ、使いこなすには練習が必要です。
2-1 防犯スプレーの使い方を動画で解説
ありがたいことにYouTubeで検索すると、
体を張って防犯スプレーの実験している映像が散見できます。
しかし見た限りでは「暴漢vs被害者」という状況を、再現している映像は見つけられませんでした。
仕方がないので自ら被験しようとしていた矢先に倉庫で見つけたのが下の映像です。
15年ほど前に撮影した実験の様子です。
実際に襲われる状況の完全再現は限界があります。
そこで可能なかぎりリアルに近づけるため、下記の条件で実験をおこなっています。
- 約4mの間合いで向き合う
- 暴漢役のタイミングでスタート
- 暴漢役はスプレーを浴びても動ける限り襲い続ける
- 暴漢役のゴムナイフが体に当たったらスプレーの負け
※強風の中でおこなったので霧状に見えますが、フォーム(泡)タイプを使用しています。(二人目は水鉄砲タイプ)
暴漢役を引き受けていただいた二人には、あらためて心から感謝します。
映像からも過酷な被験だったことが分かりますよね。
特に二人目はダウンするまで10秒以上も頑張ったので、一人目よりも多量の催涙液を浴びています。
(ここまで耐えれる者は滅多にいません)
そのため回復に2時間ほどかかりました。
※15年以上前の事なのでハッキリ覚えていませんが、
攻撃側が本気で襲わないと意味が無いので、もしも捕まえ(触れ)た場合、ボーナスを設けていた記憶があります。
とはいえ実験ですので、2人目の頑張りは驚異的です。
実際にも、これくらい追いかけてくる人間がいる、と考えた方がよいでしょう。
結果はご覧のとおり防犯スプレーが勝ちました。
しかし効果的に使うためには「条件が必要」とお気づきになりましたでしょうか?
2-2 催涙スプレーの性能を引き出す条件【棒立ちは厳禁】
まずは下記の動画をご覧ください。
防犯スプレーを有効に使う上での重要な注意点が分かります。
防犯スプレーの飛び方は「霧吹き」や「水鉄砲」と同じです。
つまり突進する人間の勢いを止める力はありません。
また催涙成分の効果も、触れてから発現するまでに、数秒から十数秒(※)かかるので、立ち止まっていると相手につかまります。(先にスプレーを当てても、相手が凶器を持っていたり、体力に差がある場合は捕まったら最後)
つまり効果があらわれ、暴漢が攻撃を止めるまでは逃げ続けなくてはなりません。
その間は距離を保ちながら、顔面に噴射し続けましょう。
過剰な噴射は呼吸困難を起こす危険があるので、相手の動きが止まったら噴射を止めて、距離を保ってください。
その後は相手から目を離さずに、110番通報しましょう。
※製品の性能や、当たる場所・当てられた人間の耐性によります。
通常だと顔面に噴射した場合で、3~10秒くらい。
しかし2-1の動画のように、強力なスプレーを浴びながら10秒以上動き続ける者もいます。
2-3 こんな時はどうする?【防犯スプレーを使えない状況】
これまで説明したように、間合いさえキープできれば、防犯スプレーは持つ者を圧倒的に有利にします。
しかしエレベーターなどの狭い空間では、間合いが取れない上に、自分自身も催涙成分を浴びる危険はいなめません。
防犯スプレーは、霧化して空中に成分が漂います。(水鉄砲タイプでも、多少のしぶきは周りに飛散します)
つまり密室で噴射した場合、相手だけでなく、自分や第三者も浴びる可能性があるのです。
言うまでもなく、危険な相手と二人きりになる状況は、最初から避けるべきです。
とはいっても最悪の事態に遭遇する可能性は誰にもあります。
完璧な方法ではありませんが、下記動画のような使い方も参考にしてください。
ただし間違いなく自分もダメージを受けます。
1パーセントでも助かる可能性をが上がるなら試す価値があるというだけです。
無抵抗という選択肢はありません。あきらめずに抵抗することも大事です。
くり返しになりますが、狭い場所での使用は第三者にも被害を及ぼします。
例えば電車内で発射した場合、痴漢一人にダメージを与える事はむずかしいので、周りの人にも被害が及ぶと考えるべきでしょう。
痴漢撃退どころか、傷害事件でニュースになります。
絶対におやめ下さい。
2-4防犯スプレーを浴びてしまったら【応急処置と催涙スプレー中和剤】
もし誤って催涙成分を浴びた場合、激痛により冷静な判断は難しいですが命に別状ありません。
早急に以下の対処をお願いします。
1.冷水を流し続ける
基本的に、ほかの処置はありません。ただし、以下の点をご注意点ください。
水をバケツや桶にためて患部を浸すのではなく、患部に水を当て流し続けてください。
その際は可能な限り「患部のみ」を洗い流しましょう。
もし顔にスプレーがかかった場合、頭から水を浴びると催涙成分を浴びていない部分にも洗い広げてしまいます。
皮膚の薄い場所や粘膜ほど痛みが強いので、本来顔だけで済んだ痛みが体や足にまで及びます。
(特に股間に広がると最悪です)
2.医師の診断を受ける
これまでに述べたように、催涙成分自体に毒性はありません。
時間がたてば効果は消えます。
ただし基礎疾患がある方やお子様の場合は、念のため医師の診断をすすめます。
また過呼吸などの異常がみられる場合も、病院で受診してください。
催涙スプレー中和剤とは?
十数年前の実験時に、中和剤の効果も試してみました。
あくまで当時の印象という前提でお読みください。
薬効など科学的根拠は分かりませんが、
私の体験では実感できるほどの中和性はありませんでした。
周囲に水道が無い時や、水で流す前に不着した成分を拭き取るなどの、応急的な使い道はありますが、
やはり冷水を掛け続ける事が一番有効な処置だと思います。
顔に付着した成分の拭き取りに使ったので、口の中にも中和剤が入りましたが、ガムシロップのような、とても甘い味がしました。
成分を調べたわけではないので何とも言えません。
しかし甘さで辛さを抑え込もうとしているのかな?と思ったことを覚えています。
※必読 防犯スプレーは持ち歩いていいの?【護身用品の所持と法律】
職務質問を受けた際に防犯スプレーを携帯していると、十中八九連行されます。
護身用品の購入は合法であり何ら問題ありませんが、「正当な理由なく」持ち歩くとこの限りではありません。
しかし具体的に「正当な理由」とは?
この点が法律上明示されておらず、判断は職務質問を行う「警察官」にほぼ委ねられています。
また多くの警官は「護身用」を正当な理由とは認めません。
(それが通れば悪用目的でも言い訳ができるので当然といえます)
つまり「持ち歩く=NG」と解釈してください。
しかし女性の場合「身を護るため」と主張して理解されることもあります。
多くのお巡りさんは、あなたの「正当な理由」を察していますが、立場上みとめるわけにもいかないのです。
結局護身用品はいざと言う時には使えないの?と疑問に行きつきます。
個人の見解ですが、今あなたが、暴力による危険をお感じなら、軽犯罪法にひるまず携帯するべきでしょう。
自分の「命」と「軽犯罪法違反」ハカリにかけるまでもありません。
ただし、携帯が社会通念的に認められない以上、見つかれば捕まります。
したがって以下の3つを理解し、メリット・デメリットのバランスから自己で判断する事が、護身用品と付き合う唯一の方法です。
- 携帯の判断は自己責任である。
- 携帯しているときに職務質問を受けたら咎(とが)められて当然。
- 没収・任意同行に素直に応じる。
詳細は過去記事もご覧ください。
【防犯グッズ】プロのボディガードが推薦|護身用品選びはこの3択でOK
ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
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こんにちは。
ご紹介されている2オンスフィリップトップの催涙スプレーの写真は3/4オンスです。またフリップトップではなくスライドロック式のものです。
余計なお節介でしたらすみません。
ご指摘ありがとうございます。
全く気付いていませんでしたの助かりました。
今後ともよろしくお願いいたします。
お役に立てたなら良かったです。
いつも非常に専門的な内容の記事ばかりで素晴らしいな~と思いながら拝見させて頂いております。こちらこそよろしくお願いいたします。
自分自身不審者に襲われたことがあるのと、世の中が最近物騒で護身用の武器を探していました。
安易に使うと余計に危険な目にあいかねないので、秒単位でどの程度で相手の動きを封じられるのかなど、とても参考になりました。
相手がナイフを投げてくるかもしれないところまで書いてくださりありがとうございます。
暴漢役の方、本当にありがとうございます。
ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。