【防犯&護身術】子どもの防犯ブザー|効果は周りの大人次第|身辺警護が思う問題点
この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴26年)
ツイッターのDMから、
以下のお問い合わせをいただきました。
子どもの防犯上、たいへん由々しき問題です。
私の居住地域(に限らず全国的な傾向かもしれませんが)では、
子供達のいたずらによる防犯ブザーの起動が多く、
我々大人達は、やれまたかと聞き流してしまいがちです。
防犯ブザーの着用や音そのものが抑止力となる事は理解していますが、
こうした現状を私のように把握した大人は多数存在するわけであって、
犯罪者もこの内に含まれているでしょう。
とすると、防犯ブザーを有効活用するには子供達への言い聞かせではなく、
我々保護者達や近隣住民の意識付けが重要であると思います。
この点について、プロの立場からアドバイスを頂けたら幸いです。
防犯ブザーそれ自体に、攻撃をふせぐ力はありません。
ブザーを鳴らすことで期待できる効果は、
以下の2点。
- 強烈な音によって暴漢や誘拐犯が犯行をあきらめること
- 周囲に対して、異常と危険をアピールする
防犯ブザーが効果的に使われるための条件は、
「個人出来る事」と「コミュニティーでなければ出来ないこと」にわかれます。
1.防犯ブザーの効果は周りの大人次第|2つの問題点
防犯ブザーによるSOSが無視される理由は、以下の2つと思われます。
- 「どうせイタズラか間違いだろう」と確認せずに判断している
- 知らない子供とかかわることへの抵抗感
子供の場合、大人に襲われたら、あらがうすべがありません。
周囲にいる第三者の介入が、命綱になります。
大人が防犯ブザーの音に無関心になると、
効果の半分が、失われる事になるのです。
まずは、子供がオオカミ少年にならないように、
「防犯ブザーがどれほど自分たちにとって大切なモノか」について、
大人が啓蒙し教育することが大前提です。
しかしSOSの受け手である大人が、サインを無視しては元も子もありません。
結局のところ、
「誤報であれば、それに越したことない」という認識と、
「100回中に1回は、本当のSOSがあるに違いない」
という、精神論的な心構えにも頼らざるをえません。
以前ツイッターで、
下記のコメントをした事があります。
ある小学生が、下校中に間違えて防犯ブザーを鳴らしたが、止め方が分からないので、泣きながら歩いて家まで帰ったそうです。
その間約20分!
誰も声をかけませんでした。
犯罪性を感じなかったで、声を掛けなかったのかも知れませんが、防犯ブザーの効果は周りの大人次第です。
泣きながら独りで歩いたお子さんは、どれほど心細かったでしょう?
こういった実例を織り交ぜながら、
大人への啓もうを広げる必要があります。
1-2 知らない子供に声をかけることへの抵抗感
これは世情をあらわした根深い問題です。
そもそもの原因として「不審者」という、
あまりにも漠然とした者の存在を無視できません。
大人なら理解していると思いますが、
下のイラストのような不審者はいません。
あくまでこれらは不審者の「アイコン」です。
しかし、「不審者」というのは、
この外見をした人物のこと、と認識している子供が、
少なくありません。
防犯教室で、頻繁に指導されている、
「不審者に気をつけろ」
は、実際には「気をつけようのない事」なのです。
不審者の識別は大人でも容易ではありません。
子供に見極めろというのは酷でしょう。
不審者を見つけることが不可能なので、
「知らない人には注意しなさい」
と指導した結果、
「知らない大人は不審者と思え」
という風潮がうまれました。
当然ですが「知らない人」の多くは、
その地域にお住いの善意の第三者です。
しかも、
もしもの時に子供を助けてくれるのも、その第三者。
その結果として、大人側も不審者に間違えられるリスクを考えて、
知らない子供に声をかけにくくなったのが、現在の社会。
しかも忘れていけないのは、
「知っている大人」による犯罪も、決して少なくない事実。
本来子どもを守ってくれる地域の大人が、
モチベーションをそがれている現状は、
由々しき事態というほかありません。
2. 【改善策】防犯ブザーの効果を最大限生かすには?
不審者そのものを見極めることが出来ない以上、
別の方法で犯罪から身を守る必要があります
2-1 防犯指導の軸|子供と犯罪者の接点を減らす
もしも子供と犯罪者が、
出会いにくい環境が作れるとしたらどうでしょう?
そんなことが出来れば、
防犯ブザーは、出番そのものがなくなります。
犯罪者と子供の接点をゼロにはできません。
しかし出会う可能性を減らすことは、十分に出来るのです。
何度も申し上げたように、
不審者とそうでない人を識別することは非常に困難。
犯罪を犯す人間に、外見的な特徴はないからです。
ただし人ではなく、犯罪という行為には、
実行する上での大きな共通点があります。
どんな場当たり的な犯罪者でも、必ず気にするポイント。
それが犯行現場です。
全ての犯罪者が共通して考えるのがこの2点。
- より犯行がラクな獲物を選ぶ
- 犯行がしやすい場所のリサーチ
犯罪とは
「人目に付きにくく・誰もが入りやすい場所」を避けることで、
被害に遭う確率を大きく減らすことが出来ます。
詳しくは過去の記事をごらんください。
ボディガードによる家庭の安全対策《身辺警護おすすめの防犯対策》
2-2 防犯ブザーが生きる環境つくり
「知らない子供には、むやみに声をかけない」
そんなルールを設けている集合住宅や、
自治体があると、耳にしたことがあります。
お気持ちはよく解ります。
そもそも知らない大人との接点を失くせば、
防犯的にも一見好都合です。
しかし肝心の犯罪者は、そんなルールを守りはしません。
実際に声を掛けなくなるのは、犯罪とは無縁の方々です。
またこれには、さらに大きな問題が潜んでいます。
じつは子供に「知らない大人とは話さないで」と指示をしても、
不審者を遠ざけることには結びつかないのです。
子供にとって「知っている人と知らない人」の線引きは、大人が思うほどはっきりしていません。
親が知らない「大人の友達」がいても、まったくおかしくありません。
道ですれ違い、何度か話しかけられた他人は、子供にとっては「知っている人」なのです。
もしも「なんかあやしいな?」と思う場面に遭遇した時に
「その人知っている人?」と割って入りやすい社会。
つまり知らない大人が声をかけやすい環境は、
むしろ防犯には、望ましいといえます。
まずは自治体などの、
小さなコミュニティーから変え始めるのが、
現実的かつ効率的と思います。
2-3 万一の時!防犯ブザーを効果的に使うには?
いざという時に防犯ブザーを役立つためには、条件があります。
- 防犯ブザーは練習なしでは使えない。
- 防犯ブザーが役に立つか?は周りの大人しだい。
- 誘拐犯の多くは防犯ブザーを鳴らさせない
(ダマしていることを子供に悟らせない)
防犯ブザーの効果的な使いかたは、こちらの記事をご覧ください。
正しい防犯ブザーの使いかた|持ってるだけじゃダメ!|動画あり
残念ながら、どれほど時が流れても犯罪者が消えることはないでしょう。
またその背後には、必ず被害者が存在します。
しかし自分や大切な人が、被害者になりにくい方法も存在するのです。
犯罪者という「人間」自体に、共通点は多くありません。
しかし犯罪という「行為」そのもには重大な共通点があります。
白昼の通り魔などの例外をのぞき、「犯罪は邪魔が入らず、おこないやすい場所で発生する」という事実です。
その上でなお、防ぎきれない犯罪者に対抗するために、防犯ブザーは持つものなのです。
ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
ボディガードと探偵の依頼先をお探しの方に、条件やご要望に合う優良な警備・探偵会社を無料でご紹介。
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DMにて質問をさせて頂いた者です。
プロの立場から多角的な観点での回答に感謝致します。
この記事によって、善良な市民同士が、互いに閉鎖的である事が問題の一つであると認識出来ました。
防犯ブザーを最終手段と考え、まずは地域の環境の改善に努めたいと考えています。
ご丁寧にありがとうございます。
こちらこそ防犯ブザーの意義と活用をあらためて考える機会になりました。
今後ともよろしくお願いいたします。