【防犯&護身術】ボディガードによる家庭の安全対策《身辺警護おすすめの防犯対策》

この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴25年)

コストをかけるばかりが防犯ではありません。
お金をほとんど使わなくても、効果的な方法はたくさん存在します。

小さいお子さんをお持ちの親御さんや、独り暮らしの女性の方、犯罪に巻きこまれない平和な生活は、共通の目標であり課題でしょう。

しかしどんな犯罪も、成功させるには「チャンス」が必要です。
逆に言うと、チャンスを与えなければ被害には遭いません。

つまり防犯対策とは「いかに犯行のハードルをあげるか?」なのです。 
そして「護身術」は、防犯対策ではありません。
矛盾して聞こえますが、護身を目的に護身術を始めるのは、効率が悪いのです。

護身術は身に付くまでに年数が必要なうえ、身につけても身を守れるとは限りません。

護身術だけで危険を防ぐ事は、どれほどの達人でも不可能です。
切り札というよりは、最後の手段というべきでしょう。

むしろ護身術の出番がない日常を作るほうが、安全への近道であり安上がりでもあります。

1.防犯・護身・警護は何が違う?

ボディガードがおこなう「警護」と、日常生活に必要な「防犯」には、明らかな違いがあります。
防犯は誤解や思い込みの多い分野なので、可能な限り正しいあり方を説明します。

1-1 ボディガードは防犯が苦手?

失敗に悩むビジネスマンシルエット

私自身「防犯」と「警護」の違いに気がついたのは20年ほど前、既に身辺警備として多くの現場を経験していた頃でした。

当時ある雑誌の企画で、一人暮らしの女性に、防犯の指導を打診いただいた時のこと。

実際に、独り暮らしの女性のアパートにお邪魔し、気になる事や改善点を指摘する内容でした。
しかし、いざお邪魔すると、何を指摘してよいやら見当が付かないのです。

それなりに現場も経験しており、年齢的にもボディガードとして自信を高めていた時期でしたが、正直言って、私はその企画に役不足でした。

ありきたりな防犯対策や、口八丁でその場はしのぎはしましたが、取材に同行した記者の方もガッカリされたと思います。
正直かなり落ち込みましたが、考えた末に気がついたのは、

身辺警備と家庭の防犯は異なるものであり、そもそも警戒ポイントが全く違う」という事です。

  • 防犯:犯罪を未然に防ぐ ⇒ 未だ犯罪が起きていない
  • 警護:襲撃者からの攻撃を防ぐ ⇒ 既に狙われている

この二つは別ジャンルなので、アプローチも違います。

そのためボディガードでも能動的に学ばない限り、防犯の知識は身に付きません。

1-2 防犯と警護は全然違う

比較のイメージ

もしもクライアント様から、家庭の防犯についての質問を受けた場合、
「自分の仕事は身辺警護なので、防犯についてはわかりません」とは、言えるはずがありません。
そこでボディガードとしては、防犯についてイチから学ぶ必要がありました。

まずは両者の違いを確認してみましょう。

防犯で警戒する相手

空き巣 ・ ひったくり ・ 誘拐 ・ 痴漢 ・ 強盗 ・ 悪質業者

警護が警戒する相手

反社会勢力 ・ ストーカー ・ 脅迫者 ・ 依頼人に恨みを持つ者

両者の違い

防犯=ターゲット個人への興味は薄い。より犯行が成功しやすい獲物が選ばれる
警護=誰でもよいわけではない。ターゲットが特定されている

防ぐ方法

防犯=ターゲットに選ばれない
警護=犯行の難易度を上げて諦めさせる

防犯も警護も、ハードルを上げて、犯行を難しくする点は共通しています。

ただし日本の身辺警備は多くの場合、トラブルの発生後に依頼をいただきます。
つまりクライアントが、狙われている状態からスタートする事がほとんどです。

一般の防犯は逆です。
犯罪者の目を、自分に向けない、または向きにくくすることが目的です。
大事なのは、自分を犯罪者のターゲットリストから除外させる事になります。

火事でいうと「消火」と、未然に防ぐ「防火」の関係に例えてもよいかもしれません。

1-3 防犯と護身術

犯罪者をやっつける女性

おなじく誤解されやすいのが「護身術」
防犯と護身術は、ソフトとハードであり、「交通ルール」と「エアバック」に似ています。

「エアバックがあるから衝突してもいいや」と思う人は居ませんよね?
まずは交通ルールを守って、事故に遭わないように心掛けるのが当然です。

それと同じく、あくまで犯罪に遭わない事を優先しないと、護身術の効果は期待できません

  • 防犯とは?:犯罪に遭いにくい状態を作る
  • 護身術とは:犯罪者が目の前にいるときの対処

まずは防犯で犯罪者を遠ざけ、すり抜けた攻撃者に対して護身術で対応する、という考えかたです。

しかも犯罪者VS護身術という図式で考えた場合、護身術の勝率は残念ながら高くありません

その主な理由は、以下の2つです。

  • 実戦で使える護身術を身につけるには、最低でも数年間の稽古が必要
  • 対刃物は想像を超える難しさ。そして現実に多いのは刃物による犯行

護身術の成功は運の要素も強く、追い詰められたとき以外に頼るべきではありません。

護身術とは、不当な力に対して力で跳ね返す技術です。
つまり自分より強い相手や、複数の相手に対しては限界があります。

最初から犯罪に遭わないに越したことはありません。

1-4 犯罪者はココを見てターゲットを決める

ターゲット層

一般に空き巣やひったくり等、ターゲットよりも犯行そのものが目的な場合、犯罪者は下記の3つの条件から標的を選びます。

  • 侵入が楽な場所
  • 人目に付きにくい場所
  • 犯行が楽な相手

逆に言うと、この3条件が充たされない標的は、諦める可能性が高くなります

「進撃の巨人」をご存知ですか?
物語の舞台となる都市は、巨人の侵入を防ぐために3重の防壁を設けています。
つまりマトリョーシカの構造です。

王族など重要人物は中心に住み、一般人は第2・第3の壁内で生活をしています。

より多くの防壁に護られた方が、侵入が困難なのは言うまでもありません。

しかし現実社会で、自宅に何重もの塀・堀を設けることは無理です。
かわりに必要になるのが、物理的な壁以外の障害です。

わかりやすく言うと、犯罪者が嫌がる物や、犯行の邪魔になる要素を、幾重にも配置するのです。

次の項目からは、一般家庭でも出来る、具体的な防壁づくりを解説します。

2.犯罪者のターゲット選びには法則がある

社会学博士の小宮信夫先生が提唱する「犯罪機会論」によると、犯罪を避けるには、犯罪を起こす「人」ではなく、犯罪が起こりやすい「場所」に注目すべきとの事。
防犯は概念が多く具体性に乏しいジャンルですが、とても説得力のある理論です。
小宮先博士HP

いわゆる不審者や犯罪者に、目印は無いため、見分けるのは大変困難です。
しかし犯罪者が好む場所(犯行場所)には共通点があります。
そこを避ければ、おのずと犯罪被害に遭う可能性は減少します。

2-1 侵入が楽で人目に付きにくい場所とは

バルセロナの路地

犯罪者が好むのは、侵入が楽で人目に付きにくい場所

デパートや駅・公園など、世の中は誰でも入れる場所がいくらでもあり、避けて生活する事は不可能です。
それらの場所に「人の目に付かない」という条件が加わると、格好の犯行スポットになります。

下記は、犯行に適した場所の例です。

  • 廃屋・廃ビル
  • 車の死角(駐車場)
  • 人通りが少なく左右が高い塀の道路
  • フェンスや植木などで囲まれた公園
  • 見通しは良いが、周囲が畑などで民家がほとんどないエリア
  • 公園のトイレ
  • ショッピングモールや周囲に人が多すぎて個人に視線が集まらない場所
  • 不法投棄物が多い場所
  • SNS等

どこも、誰でも入れて、一度入ると外からは見えにくい場所ですよね?

不法投棄を例にとると、

  • 簡単にゴミが捨てられる ⇒ 入るのが楽
  • 捨てるところを見られにくい ⇒ 人目に付かない

犯行現場としての条件を満たす危険場所と分かります。

ただし、お気付きと思いますが現代の生活で、これらの場所を完全に避けるのことは不可能です。

しかし「危険な場所とは何か?」を知り「今自分は危険な場所にいる」と認識することで、被害を防ぐ心構えが持てます。

また現実の空間だけでなく、SNS等のネット環境も「入りやすく監視が難しい場所」です。
そのため犯罪の温床になりやすいのです。

その他に、特にひとり暮らしの女性は、自宅の鍵を開けて中に入る時も危険な瞬間です。
玄関直近の死角に注意しましょう。
もしも何者かが潜んでいた場合、一緒になだれ込まれたら手の打ちようはありません。


2020年には、中目黒で宅配業者を装った強盗事件が発生しました。
届ける業者さんも、受け取り側の警戒心は理解していますので、今後は女性や子供が、あえて玄関を開けて対応する必要は無くなるでしょう。

2-2 犯行が楽な家とは

光と闇を持つ男性の手

犯罪者は、犯行の成功率でターゲットを選びます。
まずは成功ありきなので、好みや見返りは二の次なのです。

つまり防犯効果の「高い・低い」は比較論にすぎません。
では下のような、二つお住まいが並んでいる場合、空き巣はどちらの家を選ぶでしょうか?

  • ホームセキュリティ有りの家 or 無しの家
  • カギが2つの家 or 1つの家
  • 門が閉まっている家 or 開いている家
  • 通り沿い or 奥まった家
  • 住民が挨拶をする地域 or しない地域
  • 清潔で地域住民が管理している場所 or 落書きやゴミが散乱している場所

犯罪者が選ぶのは「隣に比べて入りやすい家」です。
実際に門扉が開いていたという理由だけで選ばられた侵入先もあります。


改善の余地がない条件もありますが、できるだけ犯罪者が敬遠する条件を増やせば、標的に選ばれる可能性は、確実にへります。

立地は改善の方法が無い条件の一つですが、立地的に有利なお住まいを選べるのであれば、絶対に選ぶべきです。

例えば、10軒前後の世帯で構成される袋小路にお住まいの方は、住民以外が入り込むと目立つ上に、言い訳が難しいので防犯的に好立地です。

2-3 犯行が楽な相手とは

ひったくりの標的

お子さんや女性の場合、誘拐や拉致への可能性も考えたほうが良いでしょう。
強引な連れ去りが目的の場合、犯行に車は必須です。

車は乗せられてしまった時点でアウトなので、絶対に阻止しなければいけません。

子供の場合は、たとえ知っている人でも、絶対に親の許可を得た後でなければ乗ってはいけない等のルールもご検討ください。
※誘拐や性犯罪は、知り合いによる犯行も多い

犯罪者の目線で考えると、セダンよりもワンボックスカーが好まれます。
開口部が広い方が圧倒的に連れ込みやすいためです。
逆に狭い車は、大人が本気で抵抗した場合、強引に連れ込むのは相当難しいです。

ここまでを踏まえて、下記4つを心掛けてください。

  • 出来るだけガードレールのある歩道を選ぶ
  • ガードレールの切れ目に停車している車には近づかない
  • 停車している車のスライドドアや後部ハッチに近付かない
  • 遠回りでも安全な道を選ぶ

犯罪を企てているかも知れない車と距離を取るだけで、危険度はかなり下がります。
またガードレールは引たくり防止にも有効なので、なるべく選んで歩きましょう。

防犯ブザーの効果

ランドセルにつけた防犯ブザー

お子さんの防犯ブザーは、なるべく目立ち、すぐに手が伸びる場所に携帯する事が大事です。
防犯ブザーは実際に鳴らせるか?鳴らせたとしても周囲に人がいるか?など
効果の有る無しは、すべて結果論になります。

しかし「いつでもブザーを鳴らせる!」というアピールが、犯罪者への抑止力になる可能性は大いにあります。

防犯ブザーの使用方法|変質者・ストーカー対策と女性・お子様の安全確保【動画あり】

2-4 まとめ

ファミリーとハート

効果的な防犯は、コストをかけなくても、実践可能です。
むしろコストを幾らかけても、防犯の本質を理解していなければ、効果は半減します。

もちろん通り魔や無差別殺人など、日頃の対策だけでは防げない犯罪もあります。
絶対的な防犯対策が無いからこそ、出来ることは確実におこなうべきです。

今回の記事中の、四角で囲った項目は、重要なポイントですので、ご自身の生活と照らしあわせて、変えられる部分は早急に変えてみましょう。

そのうえで、ご予算に応じた防犯用品の導入をご検討ください。

防犯ブザー

クツワ STAD 防犯アラーム SL022PK ピンク

窓用アラーム

FREQ TONE 防犯アラーム 防犯ブザー 120db 大音量 開放検知型 配線不要 粘着式 取り付け簡単 玄関 窓 ドア (2個セット)

窓用防犯フィルム

保険付透明ガラス専用防犯フィルム360 A3サイズ透明 2255

センサーライト

センサーライト 屋外 ソーラーライト A-ZONE 人感センサーライト 防犯カメラ型 IP66防水・防塵 省エネ 太陽光充電 配線・電源不要 ダミーカメラ 8LED 自動夜間点灯 人感検知 360°角度調節可能 壁掛け庭先 玄関周りなど対応 (1台セット)

防犯カメラ

COOAU 防犯カメラ ソーラー WiFi/ワイヤレス 1080P 200万画素 10000mAh高容量 電池式 監視カメラ 屋外 PIR人感センサー 双方向通話 WiFi強化 赤外線暗視 動体検知 録画 IP65防水 警報 長時間待機 太陽光 無線 IPネットワークカメラ バッテリー カメラ警報 USB/太陽光パネル充電 2.4G wifi iOS/Android スマホだけ対応 SDカード対応/クラウド保存 日本語アプリ 日本語説明書 白 (ソーラーパネル付き)

参考文献(以下書籍を参考にさせていただきました)

  • 犯罪は予測できる:新潮新書
  • なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか:青春新書
  • 犯罪は「この場所」で起こる:光文社新書
  • 子どもは「この場所」で襲われる:小学館新書
  • 暴力を知らせる直感の力:パンローリング
  • 犯人目線に立て!危険予測のノウハウ:PHP研究所
  • 親子で実践!犯罪・危険・事故回避マニュアル:主婦と生活社
加藤 一統

ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
ボディガードと探偵の依頼先をお探しの方に、条件やご要望に合う優良な警備・探偵会社を無料でご紹介。
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【防犯&護身術】ボディガードによる家庭の安全対策《身辺警護おすすめの防犯対策》” に対して2件のコメントがあります。

  1. 石田次郎善貴 より:

    素晴らしい内容でしたので、Twitterへリツイートさせて頂きました。

    師父・養父は身長制限などがない時代の警視庁のSPでしたので、手解きを学んでおり、裏家業として、警護と護身稽古をしておりますが、最早時代が違いすぎます。

    大変勉強になりました。

    1. 暴犯被害相談センター 理事 加藤一統 より:

      過分なお褒めの言葉をいただき恐縮しております。
      月に1~2本ほどですが、防犯や護身のほか、警備業に関するブログをアップしております。
      今後ともよろしくお願いいたします。

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