【ボディガードの仕事】警棒術公開②|実戦的な技=使ってはいけない技|動画あり
この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴26年)
三段式警棒は、使いかた次第で攻撃力が大きくアップします。
逆に言うと、相手に深刻なダメージをあたえかねない上に、それ相応の責任に問われることも考えられます。
つまり警棒は、使った人間の人生を狂わせかねない「諸刃の剣」なのです。
まず念頭に置くべきは、できるかぎり警棒を使わずにすませること。
危険な状況をさける、日頃の行動がありきです。
防犯を軽んじる人が警棒にさわると、より厄介な事態におちいります。
ボディガードが教える家庭の安全対策
本記事に掲載の技術は、正当な理由があり、のちの法的責任を負う覚悟がないかぎり使うことは出来ません。
また、本記事の内容を実際におこなって発生した事故や事件に対して、弊団体は一切責任を負いません。
今回の記事は一般の方ではなく、服務中にやむを得ず警棒を使う可能性のある警備員の方を対象にしています。
したがって、前提にしている警棒も、警備業法に則した製品です。
警棒には多くの種類が存在し、中には重量が重く危険な製品もある事を、付け加えさせていただきます。
警備業者等が携帯する護身用具の制限等に関する規則 (metro.tokyo.jp)
1.ボディガードの私が護身術をおすすめしない理由
もしも護身術をつかった場合、結果に関係なく使った人間はなんらかのダメージやペナルティを受けます。
ちなみに正当防衛とは、他人への暴力を容認する法律です。
つまり簡単には認められません。
1-1 護身術は割に合わない|理想の護身術って?
護身術とは、暴漢によって、自分が負うはずだったダメージを、あたえ返す行為です。
フィクションの世界では、相手を無傷のまま気絶させたり、簡単に銃や刃物を取り上げるシーンを目にしますよね。
ただ残念ながらあの域に達する人は、一握りどころか一つまみ以下。
神業的な技術の習得には、気の遠くなる月日が必要です。
今後の人生を、稽古にささげる覚悟をしたとしても身に付く保証はありません。
結論を言うと、護身目的で護身術を始める事は割に合わないのです。
もちろん、強くなるばかりが武道の目的ではないので、それ以上の価値を見出し稽古を続ける方は多くいらっしゃいます。
1-2 要覚悟!護身術をつかう恐怖
護身術で身を守るという事は、目の前にあなたによって倒された人間がいる状態を意味します。
映画や武勇伝では、あまり後日談が語られませんが、これは後の人生をも左右しかねない一大事です。
ハッキリ言って、世間でイメージされているほど、正当防衛は簡単に成立しません。
仮に成立した場合も、そこに至るまでには、身柄の勾留・取り調べ・裁判など、長期の心労が待っています。
さらには試合と違い、あなたのパンチはお金に換算されのちに賠償金として請求されます。
つまり護身術が必要な状況に直面した時点で、大損は確定なのです。
必要なのは「暴力への抵抗力」よりも「暴力を避けること」だとお分かりいただけたでしょうか?
理不尽ではありますが、よかれと思い護身術をつかった結果、過剰防衛と判断されたケースは非常に多く、場合によっては、護身術を習っていたがためにさらに重い罪に問われることもあります。
「護身術を習得している = 素手でも武器と同じ」と判断される可能性があるためです。
さらに警棒など使ったら、言わずもがなでしょう。
1-3 警備業と護身術の向き合い方
では警備員など、いつ護身術が必要になってもおかしくない職業の人は、割に合わないのでは・・・と思いませんか?
まったくその通りです。
警備員が、業務上やむなく傷害事件に巻き込まれた場合でも、正当防衛の認定要件は、一般の方と変わりません。
つまり業務上の不可抗力であっても、他人を傷つけた以上、傷害に問われる可能性は低くないのです。
じっさいに、倉庫を巡回中の警備員が、刃物をもった外国人強盗を現行犯逮捕したさい、相手に怪我を負わせたため、賠償を命じられたケースもあります。
著者の個人的な考えですが、警備などの職業についた時点で、自身が加害者となる可能性を想像するべきです。
だからこそ、日々の現場で、あらかじめ犯罪を、抑止・防止に手を抜いてはならないのです。
「犯罪に遭遇しない」それが最大の護身であることは間違いありません。
その点では、業務上、交通事故の加害者になる可能性がついてまわる職業ドライバーと似ています。
2.警棒で有効なワザは禁じワザ!
以降に紹介するのは、身を守るうえで、非常に効果の高いワザです。
言い方を変えると、大変危険なワザになります。
よって本記事ではこれらを推奨していません。
自分や誰かの身体や生命を守る方法が、他には無いとき以外に使用すると、刑事責任を問われます。
自己責任で状況を判断できる方のみ、ご覧になってください。
2-1 警棒を使うとは責任を負うことである!
警棒で身を守るということは、結果的に相手を打ちのめすことを意味します。
かなり強い表現ですが、どう言い方を変えても真実は変わりません。
そんな時に、あえて効かないワザを繰り出す余裕などありませんので、使うのはおのずと確実にダメージをあたえるワザになります。
もし相手に安全で、自分の身も守れるワザをご存知であれば、迷わずそちらをお使いください。
くどいようですが、当ブログでは、警棒の使用そのものを、推奨していません。使えば高確率で過剰防衛に問われるからです。
その点をふまえたうえで、もしもの時の参考に以下の技術をご紹介します。
効果的なワザとは、後にツケがまわってくる覚悟が必要なのです。
ちなみに催涙スプレーであれば、怪我をさせることなく暴漢を制圧できます。
ただし警備員の携帯は、残念ながら警備業法により認められていません。
2-2 警棒の限界|警棒が通用しない相手とは
警棒の危険性や、攻撃力の高さばかりをお話ししましたが、もちろんどんな相手にも有効ではなく、警棒では対処できない相手もいます。
警棒では制圧できない相手
拳銃
拳銃は説明するまでもありませんね。ボウガンなども同様です。
飛び道具を持つ相手には勝ち目がありません。
刃渡りの長い刃物
刃渡り何センチ以上を長いと判断するかは微妙ですが、20cmを超えると厳しいです。
15cmくらいでも相当怖いですね。
対格差があまりに違う相手
対格差は、おそう側・おそわれる側のポテンシャル次第なので、具体的な数字は明言できません。
あくまで目安ですが、自分よりも20キロ以上重い相手には、警棒では頼りないです。
残念ながら警棒で、制圧できる相手の幅は、そう広くないのです。
2-3 警棒で有効なワザとは
以下に紹介する動きは、過去実際に現場でつかわれて難をのがれたワザです。
不幸中の幸いで、傷害が残るダメージを与えることはありませんでしたが、その後の係争などのストレスを考えると、二度と使いたくありません。
すべて相手にダメージを与えることを前提とした危険な技です。
※ケンカで使うためのモノではありません!
つかうのは暴漢の凶行から逃れる方法が、他にない場合のみ、つまり最後の手段とご理解ください。
またこれらを使い、難を逃れたあとは、迅速に119番通報をおこないましょう。
1.基本の打ち方
パンチと同じく、力を抜いてスナップで打ちます。
その際に、警棒そのモノの重さを生かして、ムチのように弾きます。
そうすることで連打が可能です。
逆に腕の力に頼ると、二打目以降がスムーズに打てません。
警棒をしならせるイメージで打つと、素早く次のワザに移行できます。
ちなみに金属棒での殴打なので、打たれた相手は簡単に骨折をします。
2.喉・顔面への突きからの入り
空手やキックの前蹴りやジャブに相当する技。相手との距離を保つためのストッパーとして使います。
顔面やノドに警棒を突き立てると、ほとんどの人間はのけぞり、距離をとる事ができるので、それと同時に、相手の武器を叩き落してください。
基本的に距離を測るためのフェイントなので、2打目のための捨て技になります。
しかし、金属製の棒で急所をねらう以上、当たり方によっては失明や重大な怪我を負わせる危険があります。
3.ひたいを切る
警棒で額を強打すると、大抵の場合ダラダラと止めどなく出血します。
出血自体は、放置しない限り、深刻なダメージにはなりませんが、
多くの人間は、頭部から大量に出血することで、徐々に戦意を失います。
相手が攻撃をやめるまで、距離を取り続けましょう。
たいていの人間は、自分から流れる多量の血を見たショックで、
一気に気持ちが沈むようです。
また血が目に入る事で、視界をうばい動けなくなる効果も期待できます。
出血量のわりに、命にかかわるほどのダメージは与えませんが、客観的にみるとかなり凄惨ですので、過剰防衛に問われる可能性は避けられません。
4.手首の関節付近への打撃
相手が刃物を持っている場合は、
刃物の排除が最優先です。
通常の状態と違い、興奮状態にある人間は、たとえ骨折しても即座に動きを止めません。
仮に手首や手の甲が折れていても、刃物を落とすとは限らないのです。
また暴漢は、襲いながら、刃物を左右の手に持ち替えることがあります。
もし刃物を持った手を掴んだとしても、
次の瞬間に、反対の手に持ち替えて攻撃することは珍しくありません。
そのため早い段階で、相手の刃物を確実に叩きおとす必要があります。
正確に相手の凶器を落とすためには、相手の手を見ないで打つことが重要です。
狙う場所を凝視すると、よけられてしまう上にスキができます。
また動画でも解説していますが、
体当たり気味に腹部を狙って刺してくる相手に対して片手受けは不可能です。
体重が乗った攻撃には、警棒を両手で持たないと、押し切られてしまいます。
実際この攻撃は大変恐ろしいもので、技術うんぬんの前に本気で突進してくる相手の迫力は尋常ではないという事を理解しておく必要があります。
※手首や手の甲など、皮膚の下がすぐに骨の部位を金属棒で叩きますので、当然相手は骨折します。
2-4 護身術の使用は、人生を左右しかねない
護身術をつかい反撃に成功しても、相手に怪我をさせた場合は、逮捕拘留・裁判・賠償責任など、のちの人生にまで響くダメージをうける可能性があります。
どう言い方を変えても、護身とはハタから見るとケンカと変わらないのです。
つまり、どちらに転んでも無傷ではすみません。
結局最良の方法は、そのような状況に遭わないように、常日頃の行動を見直すことになります。
しかし、警護中の依頼人はもちろん、自分や愛する者の身を守るために、戦うほか選択肢がない場面に遭遇する可能性は、誰にもあるでしょう。
そんなときに悪意を持って襲いかかる暴漢の、健康に気をつかう必要は一切ありません。
以下は経験則からのイメージです。正確なデータではないので、あくまで参考として下さい。
もしも相手が抵抗をやめるまで警棒で殴打した場合、死亡率は1~2割で、何らかの後遺症がのこる可能性も同じくらいと思います。
もちろん推測の域を超えないうえに、警棒の重量や状況によります。
この数字をご覧になって意外に低いと感じる方がいるかもしれませんが、素手の場合と比べると、恐ろしく高い確率です。
日ごろから護身術との付き合い方と、使うべきタイミングを問い続け、守るべきモノのためだけに使いましょう。
ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
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