【ボディガードの会社】モンスター社員・問題社員の見分け方と採用で失敗しない方法
この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴25年)
以前の【問題社員の扱い方】元社員からの嫌がらせ対策と11+5のリスト!
では問題社員の対処方法について説明しました。
今回は採用前に問題社員を見抜くコツです。
一流企業の面接でも「問題のある応募者」が訪れ、わずかながら採用に至ることがあります。
大変失礼ですが、一流企業以外にはさらに高い確率で「クセモノ面接者」が紛れてくると考えるべきです。
私はこれまで多くの企業の、解雇・レイオフ時のトラブルに立ち会いました。
その経験から推測すると、面接者の1~2割は「?」な人が紛れ込んでおり、
更にその内1割ほどが「モンスター社員」に変貌すると思われます。
ただし私は心理学を学んだ事はありませんし、統計に基づいてもおりません。
根拠は経験のみで科学的とは言えませんが、その分机上の空論は一切なく、現実に即しています。
結論から言うと、モンスター社員化するのは「応募者100人中:およそ1.5人」です。
つまり見分けるべき相手は、わずか1.5パーセント程ですが、彼・彼女らの多くは何らかの危険信号を発しているので、発見は難しくありません。
しかし人手不足などで、面接する側が多少の違和感に気が付きながらも採用することがあります。
ただ一つ申し上げると、大抵の人事担当者は本当に人を見る目が確かです。
毎回現場でお話を伺うと「やはりプロだな~」と頭が下がります。
にもかかわらず、何故モンスター社員が紛れ込むのか?
採用の失敗には、下記2つの傾向が見られました。
- 第三者が見ても分かる具体的な採用基準が無い(感覚に頼りすぎ)
- 具体的な採用基準はあるが、例外を想定していない(感覚を信じなすぎ)
つまり「勘」に頼りすぎても頼らなすぎてもダメという事ですね。
では勘とはいったい何か?
思うに、自身の経験から導き出した「データ」ではないでしょうか?
初対面にもかかわらず何かが匂うのは、潜在意識にある「何か」に引っかかった「結果」です。
経験が増えるほどサンプルも増えるので、勘の精度が上がります。
経験を積んだ方の勘は「当てずっぽう」とは違い、信用できる意見の一つです。
「マニュアル」を補完する道具として「勘」は欠かすことができません。
勘とマニュアルの2つが、バランスよく補い合う事で正確な判断が可能になります。
しかし「勘」ではなく「都合」や「同情」など、不純とも言える感情が介在した結果、判断ミスは発生します。
2,採用時のチェックポイント
以前の記事でも述べましたが、愛憎に端を発するトラブルは、先延ばしにするほど厄介になります。
(実は職場トラブルの加害者とストーカーには多くの共通点がある)
一番の対策は入社させない事、つまり面接でふるいにかける事です。
面接に当たっては「良い志願者」を見つけるよりも、「悪い応募者」を見極める意識で臨む方が良さそうです。
ネガティブに聞こえますが、そもそも「良い応募者」は意識しなくても分かります。
2-1 面接時の質問
多くのモンスター社員には、
「高いプライド」「強い被害妄想」「プライドを守るため頻繁に嘘をつく」といった傾向が見られます。
以下の3つの質問からその気質がないか注視してください。
「当てはまる=問題あり」とは限りませんが、判断材料の一つになります。
また質問が具体的であるほど、回答も具体的になります。
退職の時期や勤続年数など数字で聞ける質問は必ずおこない、履歴書の内容と照らし合わせましょう。
①前職を辞めた理由
中途採用の面接時には、皆様なさっている質問と思います。
普通は「ベースアップしたいから」「親の介護で働ける時間が変わった」などの労働条件や一身上の都合を言うものですが、
上司や同僚との不仲など「人間関係」に言及した場合は注意が必要です。
仮に人間関係が元で退職したにしても、大事な面接時に口にするでしょうか?
もし人間関係の不満を語る場合、どの程度の熱を持って語るかなどで、容易に内面を知ることが出来ます。
どんな事情があるにせよ、初対面の相手に対して感情をあらわにするようなら、黄色信号と考えられます。
いずれにしても退職理由に人間関係をあげる応募者自体が要注意です。
②ストーキングや犯罪の被害経験があるか?
本来訊くべき事ではないので
「先日知人がこんな被害に遭ったんだけど・・」など会話の流れに混ぜる配慮が要ります。
(状況的に無理なら諦めましょう)
この質問から分かることは、被害妄想の傾向です。
実際に被害経験のある方もいらっしゃいますので、被害の「有・無」は問題ではありません。
妄想の強い人間は、対人関係トラブルにおいて「常に自分が被害者」であり、内容も整合性が伴わない事が多いです。
もし被害経験を語ってもらえる場合は、
内容だけでなく相手の口調も観察し、明らかに違和感を覚える場合は要注意です。
稀に「小説より奇なり」と言うべき 信じがたい現実もありますが、犯罪被害を多く扱う私でもご相談いただくのは4~5年に1回ほどです。
(一般の面接で出会う可能性は極めて低いと思われます)
また実のところ、被害者のほとんどは初対面の相手に多くを語りません。
③趣味についてたずねる
ありきたりな質問ですが、重要な情報が引き出せます。
普通は「○○が好きです」と答えると思います。
その〇〇が「映画」だったり「キャンプ」だったりするわけですが、
さらに「洋画ですか?好きな監督は誰ですか?」「キャンプは遠くまで行かれるんですか?道具も高いでしょう?」など
具体的な質問を投げかけ、得意分野を語れる状況をつくります。
この質問によって相手の「配慮」や「自己顕示欲」を観察しやすくなります。
もちろん自己顕示欲が生きる職場もあると思いますが、協調性を重視する業種の場合、役立つ質問です。
趣味の話が、いつの間にか自慢話になっていたり、空気を察しないで長々語る様なら考えた方が良いでしょう。
2-2 過去の職場への在籍確認
最も安上がりな身元調査は、以前に勤めていた会社への在籍確認です。
案外おこなっていない企業さんが多いのですが、コストも電話代以外かかりません。
もちろん退職の原因が、前の職場側にある場合もありますし、得られる情報が100パーセント真実とは限りません。
しかし重要な情報を得られるケースが多く、しっかりとした身元調査を行っている、という御社の採用姿勢を内外に示すことにもなります。
前項までは応募者の性質を「推測」する方法ですが、これは極めて簡単な「確認」の方法です。
中途採用の場合は、以前に応募者と働いた方が存在するのです。
この人に聞かない手はありませんし、不安の半分以上が解消できます。
「前の職場に電話するなんて応募者を怒らせないか?」と懸念される方もいますが、面接の時にその旨を本人に断れば、全く問題ありません。
その際「元上司は何部の誰か?」を聞いておけば、目当ての相手にピンポイントで電話することが出来ます。
(近年は代表電話にかけても、個人情報を理由に担当者にたどり着けない事が多い)
また応募者に
「あなたの前職場に在籍の確認をしても構いませんか?」と尋ねた際に、
顔色が変わるようなら、それが納得できる理由かを尋ねてみるべきです。
3,まとめ
理想的な、職場トラブル防止方法は、あやしい人間を会社に入れない事であり、
危険な傾向のある応募者を見分ける努力を、あらかじめするべきです。
この一手間を怠った結果、御社に襲い掛かる被害は時に甚大です。
3-1 人はいきなり「キレ」たりしない
職場の暴力事件は
「不適切な採用 → 長期間の放置 → 誤った解雇の通告」
のプロセスで発生します。
過去モンスター社員の被害は、その同僚に及ぶ事もありました。
自分で同僚を選べない従業員の皆さんが、万一暴力の被害に遭った場合、
加害者はもちろんの事 経営者の責任も重大です。
よく「突然キレた」という表現を聞きますが、人はいきなりキレたりしません。
必ず段階を踏むので、近くの人間には「キレる」までのプロセスがハッキリとわかるものです。
周りの人が、見て見ぬふりをせず、また経営者側も現場の実情に聞く耳があれば、早い段階で手を打つことが出来ます。
恨みによる復讐は、早期の手立てで大抵防げるのです。
しかしその前に「暴力傾向」や「自我の強さ」といった性格を持つ者を見破り、遠ざける努力をしましょう。
3-2 「マニュアル」と「勘」 基本は9:1
今回のチェック方法は、不適切な人物だけではなく、優秀な人材も抽出してしまう可能性を否めません。
もちろんチェックに掛かった方を、すべて不採用にすればトラブル発生のリスクは劇的に減りますが、
優秀な人材も、同時にフルイにかける事になります。
結局「良い人材か・問題社員か」の見極めは、最終的には経験からくる勘に頼らざるを得ないのです。
逃げるのか?と言われると返す言葉がありませんが、
一挙両得の解決策は、今のところ私にもわかりません。
推敲を重ねた「マニュアル」は、
勘を自分に都合よく解釈させないための「基本」であり、
「勘」は、マニュアルでは対応しきれない例外を検証する「応用」になります。
ただし例外の発生は非常に少ないので、
実際は、マニュアル(9割以上)、勘(1割以下)といった運用になると思います。
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
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