【探偵とボディガード】会社謄本|サギ師の手口と捏造方法|前編|動画あり

この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴25年)

いわゆる「パクリ屋」による、
取り込み詐欺の被害が、あとを断ちません。

それどころか、コロナ過で、
「新しい取引先が喉から手が取るほど欲しい」
という、
経営者の苦しさにつけこんだ、
犯行も報道されています。

人の弱みに付けこむ、
唾棄すべき犯罪者は依然存在しており、
そんな輩の餌食にならないためには、
最低限の知識が必要です。

会社謄本で、相手の本性を知れば、多くの詐欺被害は防げます。

今回は、謄本分析の第一人者、
中村勝彦氏に、
監修と動画での解説をおねがいしました。

「目からのウロコ」の会社謄本分析術について、
今回は「心構え」を、
次回では「具体策」について解説します。


経営者やコンサルタント業の方だけでなく、
投資や、就職先の事前調査などにも、役立つ内容です。

詐欺の渦中にいる人は、
自分が「カモ」になっていることを、信じようとしません。

もしも、お知り合いが、
うさん臭い儲け話に引っかかりそうな時などにも、
一助になれば幸いです。

監修者:中村勝彦氏プロフィール

(株)東京SRC代表
大手都市銀行のバンカーを経て、調査業界に。
著書
【会社謄本分析事始】
【元銀行員の探偵が教える「ヤバイ会社」はこう見抜け!】

商工会議所・上場企業・警察の外郭団体などで、会社謄本分析のセミナーを、過去数十回に渡りおこなっている。

1.【会社謄本】使いかたを熟知しているのは誰?

会社謄本(会社の登記簿謄本)とは、
あくまで俗称(旧称)です。
正確には、
「現在事項証明書・履歴事項証明書・閉鎖事項証明書 」
を指します。

1-1 敵を知り己を知れば・・・今あなたは百戦ごと危うい

証明書

多くの方にとって、会社謄本は、
「単なる役場や銀行への提出書類」
というご認識ではないかと思います。

では提出された相手は、
謄本の「なに」を見ているのでしょう?
逆にあなたが相手の会社を判断する場合、
謄本の「どこ」を見ていますか?

おそらく資本金・設立年月日あたりを見て、
「資本金が多くて、古い会社なら安心」と、
判断していますよね?

じつは銀行が見ているポイントも、
そう大差はありません。

しかし謄本に載っている情報は、あくまで「表の顔」、
登記する人間の都合の良いように、操作が可能です。


ただし読み方のコツを知っていれば、
謄本の中から、真実のみを抽出することもできます。

それにもかかわらず、99.9%の方が、
謄本の本当の読み解きかたをご存じないのは、
危ういことではないでしょうか?

では登記簿謄本を知り尽くし、使いこなしている、
0.01%とは誰でしょう?

例外として、マスコミは、
謄本を追いかけて取材している形跡が感じとれます。

しかし謄本を必要としているのは、
おもに一般のビジネスマンです。

中でも使いこなしているのは、やはり不動産関連や弁護士?
それとも警察でしょうか?

いずれも違います。

正解は「詐欺師」
謄本を熟知した0.01%とは、詐欺師のことです。

1-2 敵は会社謄本を使いこなしている!

電話をする怪しい男性

パクリ屋や詐欺師というのは、
「獲物が登記簿謄本のドコを見るか?」
「どうカモフラージュすれば相手が誤解するのか?」
恐ろしいほどに心得ています。

その細工は巧妙で、
シロウトが見破るのは、まず不可能。
彼らにとっては飯のタネなので、
当然ともいえます。

ただし細工とは結局小手先のワザ。
その形跡を、完全に消すことはできません。

細工特有の「気配」を察知する方法さえ分かれば、
「誠実な会社か? そうでない会社か?」
見分けることは可能です。


しかし残念ながら、
日々謄本と向き合っている職業の方でさえ、
ただしい見方を、ご存じの人がほとんどいないのが実情。

実業に取り組むすべての方が、
誠実な会社との、
お付き合いを望んでいるはずです。

その判断材料は、会社謄本にはかくれています。

2.【会社謄本】見ると何がわかる?

会社謄本は、
一見すると無味乾燥な文字と数字の羅列です。

しかし実在の会社のモノと、
架空の会社のモノでは、放つ気配に違いあります。

実在の会社である以上、
謄本の内容にも、おのずと整合性があるはず。

謄本の分析とは、
虚偽と現実との照らし合わせなのです。

2-1 【現在事項・履歴事項証明書】でわかる8の情報

本性を見る

そもそも会社謄本(現在事項証明書や履歴事項証明書)を見ると、
なにが分かるのでしょうか?
現在謄本の見本とともに、確認してみましょう。
 

①商号

「株式会社〇〇」など、会社の名前。
もちろん社名を変更することも可能ですが、
変更されている場合、古い商号は記載されません。

②本店

本店の所在地として届け出されている住所。
本来そこに会社が実在するはずです。

③会社成立の年月日

会社が最初に登記された日付。
いわば会社の誕生日なので、
登記されているかぎり、最後まで残ります。

建物で言うと建ったその日。
リフォームされた日でありません。

つまり、「日付が古い=老舗」
とは限らないので要注意。

④目的

その会社が
「どんな事業をおこなっているのか?」
が記載される欄。
通常は、本業に関連した業務が書かれています。

しかし目的数が異常に多かったり、
各目的同士に脈絡がない場合は、注意するべきでしょう。

⑤資本金の額

「資本金=会社の力」
会社規模のバロメーターと、
一般的に考えられています。

以前は登記にあたって「保管証明書」という、
預金残高を証明する書類が必要でした。
しかし現在は通帳のコピーでも認められています。

また資本金は「現金」とは限りません。
会社法では、現物(車・不動産・債権など)による出資も、
可能です。
(1回の登記につき500万円以内)

具体的な方法は触れませんが、
例えば資本金1000万円の会社設立に、
一千万円の現金は、必ずしも要らないのです。

⑥役員に関する事項

その会社の、現在の経営陣の名前。
あやしい会社の閉鎖謄本(後に説明)を確認すると、
役員が総入れ替えになっていることがあります。

その場合は、納得いく説明が必要でしょう。

⑦代表取締役の住所

代表者の住まい(住民票に記載の住所)が記載されます。

通常であれば、
記載された住所に、社長の自宅が存在するはずです。
(詳細は後編で説明します)

⑧登記記録に関する事項

最も重要なチェックポイントです。
例えば、
「以前の本店住所・いつ現在の住所に移転したか?」
の「足跡」が残ります。
ただし1謄本に乗る足跡は、前の1つのみ。
登記記録区は、
事項でさらに詳細を解説します。

一見なんの変哲もない情報ですが、
これらが相手の本性をあぶりだす、重要な材料になります。

2-2 最大のポイント【登記記録区】

詐欺会社の場合、
短期間のうちに、本店の移転を繰り返すことが多く、
中には本店設置が3日間というケースもあります。

本店の移転を繰り返す理由 :その1

法人の移転は、個人よりも費用と手間が掛かります。
そのため引越しには、それなりの理由があるはず。

つまり、頻繁に本店を移動することは珍しく、
もし短期間の間に、登記変更を繰り返してい場合は、
疑いの目を向けるべき、材料になります。

しかし前項でも触れたとおり、
1謄本に乗る足跡は、前の1つのみ。
(※上の写真のように、直前の移転情報しか記載されない)

かりに何度も移転を繰り返しても、
謄本には一覧として掲載されません。

そのため過去の情報を知るためには、
「閉鎖事項証明書」が必要
です。

普通の人は会社謄本というと、
「現在事項か履歴事項」しか見ない事を、
詐欺師は知っています。


そのため閉鎖謄本で過去を追っていくと、
とんでもない正体が現れることがあるのです。

本店の移転を繰り返す理由:その2

たとえば短期と言っても、
1年弱での移転繰り返している謄本を見る事があります。

この場合は詐欺ではなく、脱税が目的かもしれません

過去に脱税で逮捕された会社の中に、

本店所在地の税務署に、
無申告を把握されにくくするために、
10~11カ月ごとの移転を、
毎年行っている業者がいました。

ただし脱税自体は、
商売相手には損害がありません。

「それなら取引上とくに問題なし」
というのも、一つの経営判断と思います。


しかし脱税を繰り返す相手を、
取引相手として信用できますでしょうか?

私はできません。

2-3 真実を引き出せ!【会社謄本分析3つの心構え】

青空背景の子供の手 3本

2-1で紹介した、8つの情報から、
会社の実情を分析したいところですが、
その前に、まずショッキングな事実から。

「登記簿の記載事項は、事実を写したモノとは限らない」

もちろん謄本そのものが、ホンモノの前提です。

そもそも、なぜパクリ屋は謄本にこだわり、
細工を施すのでしょう?

通常パクリ屋に、事業の実態はありません。

どこからか休眠会社などの謄本を調達して、
ありもしない実態を、
さも存在するかのように見せるために、
謄本に立派な化粧(細工)を施します。

※休眠会社がダメとはかぎりません。
正当な理由での再利用もあるようです。


まず会社謄本の分析をする前に、
必須となる「3つ」の心構えを知りましょう。

1.謄本の記載を鵜呑みにしない

言うまでもなく会社謄本は公文書、
公による「証明書」です。
そこに記載された内容は、
国(法務局)によって管理された情報です。

ただし記載内容が本当か?については、
誰も保障していません。

どういう事かというと、
登記官には「形式的審査権」しかない。

つまり、法務局では、
申請された内容の真偽までは、
確認していないのです。

しかし申請されたすべての登記を、
訪問したり目で見てチェックすることは、
法務局の職員数的にも不可能です。

基本的に、申請内容は自己申告であり、
ウソが混ざっても不思議ではありません

詐欺師は入念に登記情報をでっちあげます。
「実態とは、全く違う登記内容もありうる」

と知っておきましょう。

とくに初めての取引であれば、
「疑いの余地あり」の目線でのチェックは、
やむを得ないと思います。

2.登記内容のバランスに注目する

会社も人と同じ。
年月に応じた成長をします。

事業歴が長ければ、
経歴や経験に見合った蓄積や、証があるはず。

会社の証とは「ヒト」「カネ」「モノ」
もう少しわかりやすく言うと、

  • 会社の規模に合った社屋か?
  • 社長らしい住まいか?
  • 資本金とくらべて従業員数は少なくないか?
  • 従業員数と比べて事務所は小さくないか?

いまは実際その場所に足を運ばなくても、
ストリートビューで、建物の外観が確認できます。


また会社の目的欄に、
本業とかけ離れた事業が記載されている場合なども、
なぜなのか?
整合性を考えるべきでしょう。

ただし、これらはあくまで違和感であり、
証拠ではありません。

事情があって、役員が大幅に入れかわったり、
商号や目的が変わる事も、実際にあるからです。

要はそれらに対して、きちんとした理由があるか?
納得できる説明が、できるかどうかが問題なのです。


謄本から想像するイメージと、実像の間に、
違和感がある場合は、スルーしないでください。

3.「設立が古い=老舗」とはかぎらない

通常「会社謄本」というと、
まずは「現在事項証明書」を請求されると思います。

そもそも「現在事項証明書」とは何か?

個人で例えると、
「いま現在の職業のみが記載された書類」
それが現在事項証明書になります。

つまり職歴が長く、
何度も転職経験があったとしても、
今のこと以外は、
一切わからないのと同じ事
なのです。

「現在事項証明書」には、
仮に業歴20年であっても、
移転から3か月であれば、3か月分の情報しか載りません。

もしも相手が詐欺会社であれば、
現在事項全部証明書には、
素晴らしい化粧がなされていることでしょう。

業歴の長さは、相手の信用度をはかる大きな材料。

しかし設立年月日の悪用は、
詐欺師やパクリ屋の常とう手段です。


倒産した会社や、
休眠会社の謄本を細工して、
業歴を長く見せかけることは、彼らの得意中の得意。

下世話な例ですが、登記の細工とは、
Hな本を隠したい少年が、
真面目な本を積み上げて、
Hな本を、下の方に追いやるのと同じです。

これを暴くためには、
閉鎖謄本(閉鎖事項証明書)が必要になります。

「閉鎖事項証明書」は謄本分析のカギです。
詳細は次回掲載の後編で説明します。

おそらく今後も、
詐欺の被害をゼロにすることは無理でしょう。

しかし、ご紹介したマインドを持つことで、
被害者になる確率は、必ず激減します

次回は、
最近起きた、取り込み詐欺の事例と、パクリ屋の手口。

さらに被害に遭わないための、
具体的な実践方法について解説します。
《次回へ続く》

加藤 一統

ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
ボディガードと探偵の依頼先をお探しの方に、条件やご要望に合う優良な警備・探偵会社を無料でご紹介。
長い業界歴を生かし「読みやすく価値ある」記事を提供いたします。

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