【ボディガードの仕事】警棒術公開③|小手の打ち方と練習方法|動画あり

この記事の著者:一般社団法人 暴犯被害相談センター
代表理事 加藤一統 (ボディガード歴25年)

小手を打っているところ

以前ご好評をいただいた
警棒術の禁じ手|実戦に使える技=使ってはいけない技【動画あり】
の補足として、
警棒の基本である「小手の打ち方」と
「振り出し(伸ばし)方」
さらに、
効果的な警棒トレーニングの方法を紹介します。

警棒は「打撃・関節・絞め」あらゆる技に応用できますが、
攻撃の基本は「叩く」です。

中でも最も有効で多用されるのが小手

ただし小手打ちは、
骨に直接打撃をあたえる「危険な技」でもあります。

※今回も、おもに現場の警備員さんに向けた内容です。

そもそも警棒は、一般の方の護身には向きません。
使い方を誤ったり、無意味に携帯すると、
確実に罪に問われます。

1.警棒の基本にして最も重要な技「小手」

小手は、実戦で頻繁に使われる技です。
しかし相手の安全への配慮から、
多くの教本は、
「締め」や「関節技」を推奨しています。
ただし、
それらは習得が大変むずかしく、
よほどの熟練者でないと実践できません。

1-1 ポイントは打つ「部位」と「速さ」

上腕骨

多くの指導者が、安全の観点から、
「僧帽筋・三角筋・前腕筋群」など、
骨ではなく、分厚い筋肉への打撃をすすめています。

たしかに、攻撃を受けた相手のダメージは少ないのですが、
それゆえに、すぐさま反撃を受けるおそれがあり、
自分自身の危険を増やしかねません。

この点をふまえると、最も有効な打撃部位は、
手の甲と前腕の骨(とう骨や尺骨)であり、
そこにダメージを受けると、
相手の攻撃は大きく制限されます。

ただし、金属棒で骨を叩く以上、
相手を骨折させると、考えなくてはいけません。

しかし、安全(効かない)な部位を叩いた場合、
相手を逆上させたり、
何度も殴打して、
むしろ重大なケガを負わせるリスクもあるのです。

いずれにせよ
「襲う側・襲われる側」の双方に安全な方法がない以上、
自分自身の安全を優先するのは、当然ではないでしょうか?


そのうえで、相手のケガにも配慮すると、
できるだけ少ない回数で、
効果的な場所を打つのがベターでは?
と考えます。

ただし、やむを得ないとはいえ、
他人にダメージを与える以上、
過剰防衛や、賠償責任が発生する可能性はさけられません。

1-2 小手の打ち方:その1

剣道面打ち

警棒に十分な威力を与えるには、
まず警棒自体の重さを生かす事と
遠心力やスナップが重要です。

この打ち方のメリットは2つ

  • 威力とスピードのバランスが良い
  • リーチが伸びる

警棒に遠心力をあたえる際、ネックとなるのが、
警棒が縦回転するときの、下から上に持ちあげる区間での減速です。

警棒運動図解

円運動の最下部(6時)から、
最上部(12時)までの180度は、
落下による加速が発生しません。

そのため重力に逆らう必要が生じます。

また警棒が重いほど、その際に大きな力が要るため、
ここでの減速が、
実戦では致命的になるのです。

これを防ぐために、下記の2つを意識しましょう。

  • 警棒の先端が描く円をコンパクトにする。
  • 先端の高さをあまり変えない。

こうする事で、
6時から12時の、先端の移動が少なくなります。

しかしそれにより失なわれた運動量を、
肩と肘でカバーしなければなりません。

文章では伝わりにくいので、詳しくは動画をご覧ください。

モーションは大きくなりますが、
切っ先がはしるようになります。

実戦ではスピードが重要です。

1-3 小手の打ち方:その2

光の軌跡

下の動画のように、
肩にかつぐ構えもあります。

この場合、遠心力が足りないため、
その1の打ち方にくらべると、
どうしても打撃力が落ちます。

しかしこの構えの大きなメリットは2つ。

  • 最短距離を通るため速い(打ち遅れにくい)
  • 相手に警棒をつかまれにくい。

十分な遠心力が発生しない分
「握力と手首のスナップ」が重要。

この2つが「キモ」です。
意識して打ちましょう。

また相手に警棒をつかまれた場合、
うばわれて相手の武器にされてしまう恐れがあります。
(体力差があるときに、この可能性は高くなる)

なによりも相手が刃物を手にしている場合、
警棒をつかまれたら、ほぼ反撃は不可能です。
(刃物の間合いに留まったらアウト)

その他、参考までに、
警棒のコンビネーション例を紹介します。

上記:警棒のコンビネーションの例

1-4 気にしてますか?警棒の伸ばし方

警棒を握る

一般的な三段式警棒は、
振りだした勢いによって、
接合部に強い摩擦がかかり、
ロックされます。

これが「フリクションロック警棒」です。
(以下摩擦ロック)

それによって、
継ぎ目がないかのような、強度を得ています。

ただし一度伸ばした警棒は、
コンクリートなど、
固いものに先端を打ち付けない限り、
縮めることが出来ません。

そこで近年登場したのが、
接合部を摩擦ではなく、
機械的に固定する、
「メカニカルロック警棒」です。
(以下メカロック)

メカロック最大のメリットは、
縮める際に固い床面を探す必要がなく、
また縮めるときの大きな衝突音と金属音を、
気にしないでもよい点でしょう。
(現金輸送など、実際に警棒を伸縮する頻度の高い業務の方に最適です)

しかし、摩擦ロックにもメリットは多くあるため、
実際に警備の現場で使われている警棒は、
ほとんどがこのタイプです。

まず一般的に摩擦ロックは、
メカロックよりも安価なことに加え、
最も重要な「強度が高い」というメリット
があります。

しかし、この「伸ばす・振り出す」という、
単純な動作にも、心掛けるべきポイントがありますので、
映像を参考になさってください。

2.警棒について絶対に知っておくべきこと

民間で警棒の携帯を認められているのは、
警備員の皆さんだけです。

武器である警棒を、合法的に与えられている以上、
その責任を自覚したうえで、
身につけるべき「技術」と「知識」があります。

2-1 撮影に使った警棒とおすすめトレーニング法

警棒一覧

今回の撮影に使用した警棒
(左から、ノーベル社製・自作練習用・ASP製・ウィンチェスター製・ボノウィ製・ダンベルシャフト)

ウィンチェスター製21インチ警棒(54cm/780g)

ウィンチェスター

大変重量があるので、練習に向いています。

また重さの分、
振りかたによるスピードの違いが分かりやすいので、
撮影にも使いました。

この警棒の発売当初の広告で、
「かなりの重さによる強力な打撃のため、一撃で相手を制圧できる。
そのため軽い警棒で複数回たたくより、むしろ相手に安全」
のような紹介がされていました。

一理ありますが、うのみにして頭部に一撃でも与えた場合、
相手は脳挫傷、打った人間は殺人犯になります。

スペック的にも警備業法の規定を大幅に超えています。
(現在は廃版です)

ボノウィ21インチアルミ製(54cm/350g)

ボノウィ

メカニカル(カム)ロックの警棒です。
アルミとスチール、2種類から材質を選べます。
アルミ製は軽く扱いやすいうえに強度があり、
簡単に折れることはありません。

ボノウィの警棒はバランスが良く、とても振りやすいのですが、
重量がオーバーしています。
残念ながら警備業には用いることができません。

手製の練習用警棒

練習用警棒

以前の撮影では本物の警棒を使いました。
しかし防具で十分に保護したにもかかわらず、
衝撃が大きく、受け手の安全が確保できなかったので、
今回は模擬警棒を作りました。

木製の丸棒を、スポンジで覆った、
練習に最適な警棒です。

※これでもスナップを利かせると、かなりの衝撃がありますので、
結局プロテクターは必須ですね。

ダンベルシャフト

ダンベルシャフト

上級者には、警棒の代わりに、
ダンベルシャフトを代用した、
練習や素振りをおすすめします。

高い負荷がかかり、かなりしんどいです。

※ただしダンベルシャフトには約2.5kgの重量があります。
それなりの腕力と十分なスペースが必要です。
初心者にはお勧めしません。

2-2 どの警棒でもいいわけではない!警棒と警備業法

警備業法

たまに勘違いされている方がいますが、
警備業法の範囲内であれば、
好きな(自前の)警棒を、
業務に携行できるわけではありません。

警備業者が使用する警棒は、
写真と具体的な情報を添付の上、
公安委員会に届け出る必要があります。

つまり業法の規定に則しているだけでは不十分です。

警察に手続きされてない警棒は、
携帯すると警備業法違反になります。

警棒は会社から支給されたモノ以外、使ってはいけません。

警備業者等が携帯する護身用具の制限等に関する規則

2-3 切っても切れない問題【警棒と法律】

手錠をかけられた犯罪者

弊センターのブログでは、
ことあるごとに申し上げていますが、
今回も強く警告します。

警棒にかぎらず、護身術で身を守るにあたっては、
過剰防衛や損害賠償について、考える必要があります。

この点は、なかなか映画やドラマで描かれません。

暴力には、加害者と被害者が存在します。
しかし「どちらが被害者で、どちらが加害者か?」
この線引きが、はっきりしないケースが、
現実には多いのです。

つまり暴漢に襲われて、やむなく応戦したとしても、
襲われた方が加害者になることもあります。

つまり現代社会において、
「身を守る」という当然の権利は、
有罪と背中合わせなのです。


もちろん最優先は自分の身を守ること!

しかしその結果、
過剰防衛や損害賠償などの
「法的な責任」を負うこともあり得ます。

だからこそ、日々の生活の中で、危険の芽をつみ、
犯罪に遭遇する可能性を、減らす努力が必要なのです。

世の中には無数の「冤罪」が存在すると思われ、
必ずしも真実を証明できるとは限りません。

また正当防衛とはいえ、
結果的に相手を死に至らしめる事もあります。

そうなったときに目撃者がおらず、
あなたの正当性を証明してくれる人が、
誰一人見つからないと、
想像してください。

いずれにせよ、もし自分が正しくても、
裁判では多くのモノを失うのです。

吉野量哉氏による本書には、
身を守るという当然の権利と、
それを履行した後に問われる責任の重さ、
ある日突然に逮捕拘留される恐怖が、生々しく書かれています。

加藤 一統

ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
ボディガードと探偵の依頼先をお探しの方に、条件やご要望に合う優良な警備・探偵会社を無料でご紹介。
長い業界歴を生かし「読みやすく価値ある」記事を提供いたします。

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【ボディガードの仕事】警棒術公開③|小手の打ち方と練習方法|動画あり” に対して2件のコメントがあります。

  1. 山口桂一郎 より:

    素晴らしい内容でした。
    知らない事ばかりで目から鱗が取れる思いです。
    今後ともブログ楽しみにしております。
    文末に成りましたが、素敵な知識と動画
    ありがとうございました。

    1. 暴犯被害相談センター 理事 加藤一統 より:

      いつもご覧いただきありがとうございます。
      過分なお言葉いただき恐縮ですが、
      これからもよろしくお願いします。

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