【ボディガードと実際①】身辺警護の実体験|はじめてのボディガード(前編)

初心者マークとビジネスマン

今回はいつもとは趣向を変えて
某身辺警備員が数十年前に現場デビューした時の体験談を
インタビュー形式でお話しします。

誰でも当然駆け出しの時代はあり、
そこを通らずに一人前に成長することはあり得ません。

今回お話を聞かせていただいたK氏は
現在も現場に出ている現役のボディガードです。

ちなみ個人情報への配慮から、内容に若干のアレンジを加えていますが
基本的にすべて実話です。

はじめてのボディガード【前編】

ではまず自己紹介からお願いします。

まずは自己紹介

Kと申します。
身辺警備歴20年以上になります。

20代半ばの時に、大手警備会社の協力企業で
身辺警護専門の会社に入社しました。

その前職は厨房機器メーカーの営業なので、全くの畑違いからの転職です。

身辺警備業界に入られた経緯は?

当時の仕事に不満があったわけではないのですが、
何となく面白みを感じられなかった頃、
学生時代の友人で大手警備会社で働いている奴から、

「ウチの協力会社でボディガードを専門にしている警備会社があるから紹介するか?」
と言われて興味本位で面接に行きました。

そんな軽いノリですか?

転職先はボディガード

ええ、そうです。
「それは面白そうだ!」と単純にそう思いましたね。

熟考せずに、次の日には当時勤めていた会社に辞表を提出しました。
本来辞表提出から退職までは1か月必要ですが、
引き継ぎを含め10日後の退職が認めてもらいました。

結果的に警備業界に腰を据えましたが、当時は本当に勢いのみです。

ちなみに私の入った会社はボディガード専門と言っても、普通の施設警備も請け負っており、
内訳としては「制服の警備6割・身辺警備4割」くらいだったと思います。

ボディガード専門会社というのは当時珍しいと思いますが?

都内にわずか3社!

確かに当時は、日本にボディガードを請け負える会社自体がかなり希少で、
私の知る限り都内でも3社だけでした。
私自身「日本にボディガードがいるんだ!」と驚いたほど認知度は低かったです。

はじめてのボディガードはどんな案件だったのですか?

意気揚々と入社しましたが、
半年間は一切ボディガードの仕事はさせてもらえず、
週6で制服警備の現場に入っていました。

今思えば当たり前です。
新米の若造にいきなりボディガードを任せる訳がありませんよね?

ただ自惚れも強く、ボディガードの現場に出たくてウズウズしていた私は、社長に直談判しました。

若いと言っても20代の半ばですから、分別がなく今思えば恥ずかしい限りです。

それで認められたのですか?

はい社長が肝の太い人で
「そんなにやりたきゃ次に入った仕事は君に任せるよ」と言ってくれたんです。

まぁ社長からしてみれば、この世間知らずを懲らしめようという気もあったのかもしれません。

その3日後、休暇日の昼12時にいきなり初仕事の連絡がきました。

えっ!そんな簡単にボディガードて出来るんですか?

素人同然

あっ、これ言わない方がよかったかもしれませんね。
今はボディガードのスクールなども有るようですが、当時はそんなもの一つもありません。
まぁ あっても入らなかったでしょうけど(笑)

とにかく私が身辺警護員として受けた教育は
入社時に受けた30時間の法定研修のみでした。

それも内容は、警備業務全般に関するビデオ鑑賞が7割以上です。

それで現場に出されるのですか?ちょっと引きますね・・・

ええ、当時の私もちょっと引きました(笑)

しかし現場に出たい気持ちが強かったので
むしろ研修なんか少ない方が良かったんですね。

今思うと怖いもの知らずでゾッとしますが・・・

なので私のボディガードのスキルは、
全て独学と現場での実地体験です。

それもいずれ別の機会でお聞かせください
ではそろそろ初現場の話を

身辺警護初体験

その日の夜から、真知子さん(仮名・38歳)という小3の息子がいる女性の身辺警護に毎日夜~朝の12時間・週5で私が1名で就くことが決まりました。

初日は確か新宿の喫茶店でクライアントと待ち合わせ、
1時間ほどミーティングを行なったと記憶しています。

彼女はバツイチ独身でしたが、資産家の娘のため生活には余裕があり、
彼女自身デザイナーで身を立てており、それなりの収入があったようです。

また仕事は自宅仕事をおこなっており、今でいう在宅ワークですかね。

どんな依頼だったのでしょう?

ご依頼内容

要約すると以下のとおりです。

  • 元交際相手で元ヤクザの小宮(仮名)という男が、数か月前から殺すと脅迫を続けている。
  • 小宮の執拗な脅迫電話に依頼人は心身ともに疲れ切っていた。
  • 警察にも被害届は出しているが、実被害が無いという事で捜査はしていない。
  • 当時はストーカーという言葉すらなく、警察が男女トラブルに介入する事は今以上に稀だった。
  • 仕事は21時から朝9時までの12時間でその間は、依頼人宅のリビングで待機、依頼人は隣室で就寝というスタイルに決めた。
  • 彼女の自宅はオートロックマンションの1階で、日中は管理人が常駐している。
  • ハヤト(仮名)という小3の息子がいるが、近隣に住む依頼人の両親が週3で預かっており、警護が始まってからは完全に両親宅に住むことになった。
  • 電話が鳴っても彼女の許可無しで出てはいけない。
  • 依頼人の強い意向で住居はそのマンションに固定(安全な新居を探す気はない)

大体こんな内容です。

打ち合わせ後に、新宿から車で30分の依頼人のマンションに到着したのは23時過ぎでした。

結構ハードな内容じゃないですか?

警護開始!

はい、今思うと一人でやる現場では絶対ないです。
社長の肝が太いとかいう問題ではありませんでしたね(笑)

ともかく一人きりの現場がスタートしました。

到着から15分ほどした頃、早速小宮から脅迫電話がありました。

おびえた様子で電話を切った後、彼女が言うには、
小宮は私(ボディガード)の存在をすでに知っており、
私も一緒に殺すと宣言した、と言うのです。

因みにその時にはじめて、小宮が拳銃を持っていると聞かされました。

正直言って、味わったことのない恐怖を覚えましたが、直談判までして入れてもらった現場です。
今さら社長に降ろしてくれと言える筈がありません(笑)

その日は時間も遅かったので依頼人は寝てもらい、朝まで異常に張り詰めた気持ちで過ごしましたが、
幸いその日は何も起こりませんでした。

警護中はどんな風に過ごしていましたか?

警備体制

依頼人からは、自分の家の様に好きに過ごしてくださいと言われていましたが、
リラックスする余裕などある訳がありません。

そもそも仕事中ですからね。
基本は居間で待機、その他に不定期巡回を一晩に10回以上していました。

またテレビやラジオを点けると小さな物音が聞こえにくくなるので、
せいぜい雑誌をパラパラめくる位しかしていません。

特に最初は緊張感が凄かったので。

その後は変わったことがありましたか?

盗聴されてる?

翌日また夜9時に上番(警備用語で服務開始)すると、
彼女はホッとした様子で私を歓迎し、
昨夜より幾分打ち解けた様子で、これまでの小宮の悪行を語りました。

その日も私の到着から30分ほどして電話が鳴りましたが
電話主は小宮です。
小宮いわく「若い男と随分楽しそうだな、殺してやるから2人で待っておけ」というような事を言って乱暴に電話を切ったとの事です。

これは盗聴されている可能性が高いという事で、
一応室内を調べましたが見つけることが出来ません。

当時は私も盗聴の知識が乏しく、今ほど業者も多くはありませんでしたが、
知り合いの探偵に盗聴発見業者を教えてもらい、後日そこに依頼するように真知子さんに勧めました。

しかし予算的に厳しいからと断られてしまいます。

また彼女が言うには
「あなたが守ってくれれば問題ないし、特にやましいことがあるわけでもないから盗聴なんて気にする必要がない」
との事でした。

随分信頼されましたね?

自分の命と子供の命

それはどうでしょうか・・・

3日目も雑談をしていると電話が鳴りました。
もちろん小宮です。

内容は昨日と同じくボディガードと一緒に殺すといった内容でした。

さすがにこの頃は私も慣れており、
「こいつ同じ事しか言わないな」とあきれると同時に、小宮のねちっこい性格に怒りを感じていました。

その後に彼女が就寝してから改めて部屋を見渡すと、子供のミニカーと漢字ドリルが目に入りました。

その時なぜかひどく感傷的というか、ヒロイズムを覚えまして、
小宮の身勝手な行いがこんな小さな子供まで苦しめていると思うと、
怒りの他に
「子供と引き換えなら自分の命くらい大した事ないな」と本気で思いました。

その後も恐怖が消えたわけではありませんが、随分と気持ちが軽くなったのを覚えています。
自分でいうのもなんですが、ちょっとカッコ良かったですね。

なんでそう思ったのでしょうか?

違和感?

気の迷いでしょう(笑)

このように毎晩夜9時に上番し、
1~2時間の雑談後に彼女が就寝、私は朝まで小宮を警戒する日が続きました。

そうして3日4日と過ぎていくうちに、何とも言えぬ違和感を覚えるようになりました。

何の違和感ですか?

彼女の話と行動の整合性の無さにです。

警備開始から5日ほどしたころから、彼女が一人の女友達を度々招くようになりました。

名前は忘れましたので、仮に「花子」にしておきます。

花子は1日おきに訪れては泊っていくようになりました。

真知子さんと花子の会話は主に小宮の悪口、その他は他愛もない話です。

その後も変わらず脅迫は続いていましたが、奇妙な事に花子のいる時に脅迫電話は一度も鳴らないのです。

私が電話に出ることは禁止されていたので、いつも電話に出るのは彼女自身です。

そのため会話の内容は彼女からの伝え聞きになりますが、
無言電話は一度もなかったはずです。

いずれにせよ、かなり早い段階から、彼女には何となく違和感がありました。

《後編に続く》

加藤 一統

ボデタンナビの運営者
加藤一統 一般社団法人暴犯被害相談センター 代表理事
民間警備会社で1995年より身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年
ボディガードと探偵の依頼先をお探しの方に、条件やご要望に合う優良な警備・探偵会社を無料でご紹介。
長い業界歴を生かし「読みやすく価値ある」記事を提供いたします。

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