【武装強盗に備える】暴力に有効な3つの壁

これまで通り魔や誘拐など、様々な犯罪の対策を記事にしました。

危険を７０％減らす方法と、はじめに知るべき本当の効果
ボディガードによる家庭の安全対策《身辺警護おすすめの防犯対策》

いま深刻な社会問題となっている凶悪な強盗事件。
在宅中に白昼堂々と押し入る手口は、日本中を震撼させています。
この令和の世に、暴力という原始的な手段を「手っ取り早い」と考える者がいる以上、何らかの対策が必要です。
犯罪者は、少しでも狙いやすいターゲットをえらびます。
つまり、こちらが犯行のハードルを高くすれば、その分だけ犯罪者から敬遠されます。
しかもそのほとんどが、簡単でコストがかからない事ばかりです。

１．暴力の被害を防ぐ３つの壁

身辺警護では、アプローチの違う３つの対策を「壁」にして脅威に備えます。
壁とは物理的な物とは限りません。犯行の邪魔になるあらゆる要素を指します。
今回は強盗に有効な「３つの壁」について解説します。

※強姦犯の対策もほぼ同じです。

1-1　第１の壁（目を付けられない）

結論から言うと第一の壁は「ターゲットに選ばれないこと」
そのためには「個人情報を漏らさない」ことが重要です。
強盗や強姦犯は、ある程度ターゲットを絞ってから犯行に及びます。

今回報道された強盗事件には、実行犯がSNSでかき集められたという特徴があります。
これは、振込詐欺と同じ構造であり、実際に詐欺グループが作った「リスト」からターゲットが選ばれたとみられます。
では連中はどのようにリストを作成しているのでしょうか？
情報を集める有力な方法として、アンケート名目の直接電話があります。
「名前・住所・年収・現金資産の有無・既婚or独身・家族構成」はもちろん、介護業者をよそおえば「入居費用の蓄え」や「子供の援助があるか？」など、家族の状況まで聞き出せます。

知らない相手の質問に答えないのは当然ですが、連中は断りにくい空気を作るプロです。
「答えないと冷たく思われるかも・・」という心理と、そういう気持ちを持ちやすい相手をひたすら求めています。
断るのが苦手な方は「家族に相談しないと答えられないルールがあるので」など、自分に決定権がない事を理由にするのも手でしょう。
少なくとも、赤の他人に個人情報を即答するべきではありません。
そして大抵の場合、即答が必要なのは相手側の都合です。

また近年、犯罪者の情報集めに欠かせないのが、SNSの投稿です。
犯罪者が知りたいのは、あなたの住所や電話番号だけではありません。

1. 通勤や帰宅の時間
2. 資産価値のある物の有無
3. 同居人やペット
4. あなたの容姿
5. 自宅の間取り
6. セキュリティの有無
7. よく行くお店

など個人情報すべて。最終的にリストの精度を上げるため、現地まで足を運びます。
業者を装った現地調査も、古典的ながら有効な手段です。（狛江の事件でも、約1年前から屋根のリフォームを名乗る数名がうろついていたと言われる）
自分の事はもちろんですが、ご近所の事も安易に他人に教えるべきではありません。

また強盗の場合、不在よりも「在宅時刻」の情報がとても重要です。
その恐ろしい理由を次項で解説します。

1-2　第２の壁（侵入させない）

空き巣は家人との接触を避けるため、留守宅をねらいます。
しかし強盗は在宅中に押し入ります。
つまり人との接触を前提にしており、暴力も前提としているという事です。

ただし強盗を実行するには、家に入る必要があります。
そのため「叫び声」や「物音」が近隣に届く場所にくらべて、お隣が遠かったり不在がちなお宅は、絶好のターゲットになります。
本来自宅は最も安全な場所です。
しかし一度侵入されると、外に異変が漏れにくい密室になるため、最も危険場所に変わります。
つまり日中でも、近隣が留守がちなエリアは危険といえます。

侵入を防ぎ被害に遭わないためには「自らドアを開けない」と「突破されない」２つの角度から考える必要があります。
宅配便など訪問者を装い玄関を開けさせるのは、最もオーソドックスな方法です。
これを防ぐには、ドアを開けずに対応するしかありません。

• 置き配を利用する（死角で待っている可能性があるので、置かれた荷物をすぐには取らない）
• チェーンで対応（ただし一度隙間ができたドアは破壊できます）

いずれにせよ中から開けないかぎり、基本的にドアからは入れません。
ただし、窓からの侵入を防ぐには、強化ガラス（もしくは防犯フィルム）と補助錠などの物理的な防止策が必要です。
犯罪者もコスパを考えます。つまり、労力に見合う見返りがあるか？です。
裕福に見えるお宅は、より収穫が大きいと判断されやすくなります。

また高い壁で囲まれたお宅は、敷地内に入られると周りから見えにくくなります。
犯罪者のターゲットになりやすい富裕層は、ホームセキュリティーだけでなく、窓やドアなど侵入口の、物理的な強化が必要です。
もちろん完全に侵入を防ぐことは出来ません。しかし間違いなく突破が難しくなります。
１１０番通報と、内鍵のある部屋に隠れる時間が確保できれば、暴力を受ける可能性は大きく減ります。

1-3　第３の壁（もしも侵入されたら）

強盗団が在宅中を狙うのは、金のありかを直接聞き出し、探す手間を省くためです。
つまり顔を合わせるリスクよりも、隠し場所の情報というリターンを重視した結果でしょう。
そして情報を得る手段として暴力を使います。
基本的には、凶悪犯に侵入された時点でアウトです。
そのため第１と第２の壁が重要なのです。とはいえ諦めるわけにはいきません。
万一侵入された場合、選択肢は４つあります。

１，無抵抗　

多くの場合、無抵抗は自分の意志というより、動けなかった結果だろうと思います。
基本的に強盗の目的は金品、強姦犯は性的欲求です。
つまり必要以上の量刑は、連中も望んでいません。
そのため無抵抗が、結果的として被害を最小限におさえるケースも多くあります。

ただし１９９５年の「八王子スーパー強盗事件」のように、無抵抗の相手を手にかける者も少なからず存在します。
「目の前の相手がどちらのタイプか？」これを見極めるのは容易ではありません。
ただし殺人には、衝動的なケースと計画的なケースがあります。
どちらの場合も、犯人が口にするのは「大人しくすれば何もしない」という言葉。
抵抗させないことが目的ですが、目的が違う２者では行動に微妙な違いが出ます。

ここで質問です。
家に押し入った犯人が下の行動を取りました。目的はなんでしょうか？

• 　問１,犯行を終えた後に、強盗が台所に向かった
• 　問２,テレビのボリュームを上げた
• 　問３,引き上げる前に窓を閉め始めた
• 　問４，押し入った強盗が電話線を切った

これらは、これから立ち去る者には必要ない行動です。
つまり次のように考えられます。

• 　推測１,台所に包丁を探しに行ったのでは？
• 　推測２,物音が聞こえないようにテレビの音を上げたのでは？
• 　推測３,悲鳴が漏れないように、窓を閉めたのでは？
• 　推測４，通報を遅らせるため。つまり命を奪う気はないのでは？

もちろん答えは分かりません。
しかし相手の行動や言動は、多くの場合ヒントを含んでいます。
違和感と内なる声は、自分を守る最大の武器です。

２，逃げる

十分な距離があれば、相手の攻撃は届きません。
つまり優先するべきは、その場から少しでも遠くに離れて助けを求める事です。
ただし、よほどの豪邸でないかぎり、逃げ切る前に捕まります。
基本的に住宅は袋小路と同じ。こちらが玄関に背を向けていない限り、逃げ切る事は難しいでしょう。
実際に逃げ切るためには多くの条件が必要です。
相手との「距離・地形・脚力の差」などが揃わなけ不可能であり、これらが揃うケースは稀です。
もちろん可能であれば「逃げる」はベストな選択です。
しかしあくまで理想であり、そもそも選択肢にないケースが少なくありません。

３，隠れる

家の中で追いかけてくる相手から隠れる事も、現実には不可能です。
映画のようにベットの下やクローゼットに身を潜めることなど出来ません。
ただしトイレや納戸など内鍵がある部屋に逃げこむのは有効です。
とはいえ逃げ込むまでの時間と、助けがくるまで持ちこたえる時間が必要です。
万一の時にシェルターとして使う部屋を決め、助けを呼ぶための電話（子機）や緊急通報ボタンを常備するか、家でも常にスマホを携帯する必要があります。
どんなに丈夫なドアでも、時間を掛ければ破壊は可能です。
外部にＳＯＳを発信しなければ、立て籠もっても突破されるのは時間の問題です。
もしも通信手段がなければ仕方がありません、１１０番通報しているふりをしましょう。

４，戦う

本来は避けるべき最悪の選択肢であり、多くの専門家も護身術はすすめていません。
しかし現実には反撃する以外にないケースも多く、他に手がなければ行動するしかないでしょう。
とはいえ押し入った暴漢を、撃退することは至難のわざです。
どう転んでも、こちらの不利を覆すことは出来ません。
ただし少しでも有利に近づける事は可能です。
戦いは、強い武器をもつ方が有利になります。
したがって、ホームディフェンス用の武器が結果を変える可能性があります。
そしてそれらは、あらかじめ備えていないかぎり、必要な時に手元にはありません。
次項では現実に、どのような護身用品を備えるべきかを解説します。

２．侵入された場合の対処（生きる確率を最大に上げる方法）

護身術の成功率は高くありませんが、やる以上はためらわず動くべきです。
とはいえ体格差や人数差は、多少の格闘技経験では覆すことができません。

2-1 戦いに武器は必須

自分よりも強い相手に対抗するには、絶対に「道具」が必要です。
そして襲撃犯は、自分より強いと考えるべきです。
身の回りには「モップ・ペン・ハサミ・椅子・消火器・傘・・・」など武器に転用できるものが多くあります。
必要に応じて周りの物を、武器に使うのは悪い方法ではありません。
しかし一番効果的なのは、身を守る道具として作られた「護身用品」です。
そもそも武器ではない物よりも、それ専用にデザインされた護身用品の方が優れているのは当たり前です。
できれば代用品ではなく、護身用品の購入をおすすめします。
護身用品は持ち歩くと、職務質問などで咎められる恐れがあります。
しかし合法的な物であるかぎり、家庭に置くことは何も問題ありません。（銃刀法等で所持そのものが禁止されている物は除く）
暴力犯罪の約３割は住宅で起きています。
この事実を鑑みると、自衛のため護身用品を常備するのは当然と言えます。

2-2 ホームディフェンス向きの護身用品は？

結論から言うと「催涙スプレー」です。
護身で最も重要なのは相手との距離。
相手が刃物を持っていても、攻撃が届く範囲にいなければ基本的には安全です。
しかし家の中にいるかぎり、いくら逃げまわってもいずれ捕まります。
そのため暴漢を「追えない状態」にする必要があります。
催涙スプレーを浴びた人間は、強烈な痛みと刺激により、３０分～１時間は動けません。
催涙スプレーは、誰が使っても同じ効果がえられる最高の護身用品です。
しかも後遺症の恐れがないので、必要以上にケガをさせる心配もありません。
ただし催涙スプレーは、浴びてから効果が現れるまで、多少のラグがあります。
発現までの時間は、製品や個人差によりますが、２～１５秒くらいです。
そのため信頼できる製品を選ぶことが重要です。

ただし催涙スプレーはオフェンス型の護身用品であり、相手の攻撃を防ぐ機能がありません。
一部の製品をのぞく
つまり効果が現れるまでの間は、別の方法や道具で相手の攻撃を防ぐ必要があります。
逃げ場がない時に、距離を保つ最適な道具が「棒」です。
ただし民家の屋内で扱う以上、長すぎる棒は向きません。とはいえ短かくてもリーチが足りず不十分です。
そのため６０～１２０ｃｍくらいから、体格とお住いの間取りにあった長さの物を選びましょう。
具体的には、長め（６５ｃｍ以上）の警棒か、杖術用の杖（棒）がおすすめです。
モップや角材などの代替品に比べ、強度と扱いやすさが断然上回ります。

もしくは「ポリカーボネイト製の盾」も有効です。
サイズ的に持ち歩くのは難しいですが、店舗や家に備え置くには最適な護身用品です。
近年は、盾の持ち手に催涙スプレーを装着できる製品があり、かなり実用的です。
値段もそれほど高くないので非常におすすめです。

レニーガード RG535A1

2-3 まとめ

社会学者の小宮信夫教授が、一連の強盗事件について興味深いコメントをしています。

「特殊詐欺をやっていたグループが、強盗の方がコスパが良く、リターンが大きいという理由でシフトしてきたような感じがします。
実行犯のリスクは確かに高まりますが、指示役や元締からすると、それほどリスクが高くなった認識はないと思います」

このコメントからは、現代の犯罪傾向が垣間見えます。

• 若年層を中心に、犯罪の加担に抵抗感の低い者が一定数存在する。
• ＳＮＳを使えば、そういう者のリクルートは簡単である。

とても恐ろしい事です。
しかし安易な犯行を好む連中にとって、防犯意識の高い人はターゲットに選びにくいとも言えます。
犯罪は決して撲滅されません。残念ながら誰かは被害者になるのです。
しかし心がけと備え次第で、被害者になる確率を大きく下げることができます。

最後に以前紹介した「通り魔による突然の襲撃を防ぐ３つの壁」を紹介します。

1. 周りよりも早く危険に気付く（スマホ中は不可能）
2. 即座に行動する（逃げる・隠れる・攻撃に備えるなど）
3. 避けようがなければ戦う

異変に気付くのが早ければ「逃げる・隠れる・戦う」など選択肢が増え、行動に必要な「距離と時間」を稼ぐことができます。
基本的に、犯罪対策とはすべて同じです。意識一つで犯罪との遭遇率自体が減ります。　
身を守る最大の武器は「いち早く危険に気付くこと」です。
防犯意識がない場合、気付くのは被害に遭った後でしょう。